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日本オープンゴルフ選手権競技 2015
小平智がジャンボ越え
「率直にすごい嬉しい。今日は集中して、ゾーンに入れた」。
スタートの1番から4連続バーディで、猛然と攻めた。前日初日は1アンダーの35位タイから、いきなりスコアボードに名前を載せると、こちらもまた凄いゴルフを展開した同組の金谷拓実さんと、まるで一騎打ちのようになった。
首位タイでもつれ込んだ15番ではボギーを打って金谷さんの首位獲りを許した途端に、プロのプライドに、火がついた。
「年下のアマチュアには、負けてらんねえ」。
キャディの大溝雅教さんに宣言した。「ここから2つ、バーディ獲るから」。
特に難易度の高い上がり3ホールも、「難しいと思ってやったら、その通りになっちゃうので。攻めの気持ちでやっていた」と16番は、距離が必要な左のバンカーもドライバーで悠々と越えて、140ヤードの2打目を左1メートルにつけた。
17番のパー3はグリーンの奥ラフに外しても、「バーディを獲ることが当たり前だと思っている」。
10ヤードのアプローチはサンドウェッジで「入れることしか頭になかった。イメージ通りに打てた。2メートル手前くらいから、入りそうと思った」と、チップインバーディでガッツポーズを振り下ろす。
最後の18番も圧巻のティショット。左のバンカーを向いてフェードボールで、狭いフェアウェイをとらえた。205ヤードの2打目は5番アイアンで、「手前のエッジに落として転がせば、奥の傾斜で戻ってくると計算通りに打てた」。
29をマークした前半9ホールの8番は、すでにそれまで6つのバーディを積み重ねておきながら、366ヤードのパー4でなおワンオン狙い。「可能性があるなら、僕は狙う」と、とことんプラス思考は、今から2ヶ月前にさかのぼる。
「調子は良かったのに、成績に伴わないのがもどかしい」と悩んでいた小平に、知人が勧めてくれた本は「勝負脳の鍛え方」。著者の林成之(はやしなりゆき)氏は、脳神経外科の世界的権威で、メンタルトレーニングを受けてみないかと、とんとん拍子に話が決まった。
元来の攻撃ゴルフに、磨きがかかった。「心も体も脳からの指令で動いている。日本人が、ビッグスコアを出せないのは守っちゃうからだ、と先生に言われた」。最後まで、攻めのゴルフを貫いて、大記録を達成した。
パー72のコースにおけるこの日の62は、92年のジャンボ尾崎の64を抜いて、データが残る、1985年以降の今大会の最少ストロークと聞いて、喜びがいや増した。
今年は4月の開幕戦で、ツアーで初めてそのジャンボと回って、感嘆した。「まだ若い自分にスコアでも、飛距離でも勝とうとしている。あの年で、こんなに凄いのに、若い僕らがまあいいや、なんて思うなんて絶対ダメと思った」。
先週は、たとえ2週連続の予選落ちでも「諦めて回るのか。何か得るものがあると思って回るのかでは全然違う」と、ゴルフに対する姿勢そのものも変わった。
悲願のタイトル獲りを前に、心も体も完全武装で乗り込んだ。この日本一決定戦は、2008年にデビュー戦を飾ってから、ゴルフ人生でひとつ大きな目標になった。
シード選手でさえ敷居の高い今大会は、「日本オープンに出てこそプロゴルファー」と、8年連続の出場を果たした今年は、「絶対に勝ちたい試合と照準を合わせてきた」。
2打差の首位で大会を折り返して、週末も勝負脳が加速する。