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ISPSハンダグローバルカップ 2015

復活を期す矢野東が3打差の単独首位に!!

決勝ラウンドを前に2位とは3打差。この日は66という快スコアとは裏腹に、非常に過酷な1日だった。大会2日目は、午後からかなりの雨量が見込まれて、「1ホールでも持ってくれ、と」。午後から、祈るような思いで出ていった。

前半こそ小雨。「風もほとんどなくて、いい状態。たくさんチャンスについてくれて」。3つのバーディで貯金を作っても、7番から降り始めた雨は、そんなものも簡単に消し飛んでしまいそうなほど。

「雨は強いし、風は強いし、寒くて。早く今日1日が終わってくれ、と」。後半は、残りホールばかり数えて歩いた。「キャディに、あと何ホールか、と。聞きながら回った。とにかく、ボギーを打たないように、と。それだけを考えた」という。

それだけに、上がりの連続バーディは「ラッキーでしかない」。特に17番のチップインは「ものすごく嬉しかった」。シード落ちを喫した昨シーズンに、兆しが見えたイップスの症状。
ウェッジの溝の規制が始まったのを契機に、芽生えた苦手意識。「今までは上げて、スピンをかけて、というのが出来にくくなって、グリーンに止めづらくなって。今まで転がすというのをやってこなかったせいかもしれない」。

いつしかたとえラフからでも、グリーン周りでパターを握るようになり、ますます苦手意識が加速した。折しも、「俺の生命線」と言い切るほど得意だったパッティングにも、陰りが見え始めて、「前は、寄らなくても入っていたのが入らなくなって、アプローチにますますプレッシャーがかかるようになった」。

イップスの症状は、メンタル面が大きく影響すると言われる。「短いのを外しても前は気にならなかったのが、短いのを外し出すと、その残像が残って、悪い方、悪い方へと」。
しかし、コーチの内藤雄士さんと、そこはあえて技術の問題としてとらえることにして、練習を重ねたこのオフ。「どんなライでも手前のクッションを使って、とにかく転がして寄せる。基礎中の基礎に徹底的に取り組んだ。つい、パターを握りたくなる場面も、意を決してウェッジを持って、成功体験を重ねていった。

その集大成が、この日の17番だったのだ。このパー3で手前の花道に外した際によぎった嫌な記憶。「むしろ悪いライならインパクトも思い切って、強く入れられるんです」。言い訳のしようのないライから「チャックリしたり、トップしたり」。なんともいえないあの屈辱。それを払拭するに値するチップインバーディだった。以前なら迷わずパターを握った場面も、59度のウェッジで決められた。
「たくさんの時間を費やしてきた甲斐があったと思えた。一生懸命にやってきたことが、形になったと思った。以前なら、確実にボギーにした場面。それを思えば今日は2打も違う、と。嬉しくて・・・」。
喜びは、いつもクールな選手には珍しい、力のこもったガッツポーズに現れた。
3打差の2位に控える世界ランカー2人。
「2人とも、先週は全米オープンをやってきたんでしょう? いや、本当に凄いわ」と、ただただ脱帽しかない。そんな2人に今の自分がまともに張り合えるわけがない。「もうちょっと、なんか結果出していれば大きなことも言えるんでしょうけど。今の俺にはそれどころじゃない。誰と回っても、自分が良いスコアを出すしかない。
明日明後日も、とにかくアンダーパーで回る。それしかない」。
残り2日もがむしゃらにやる。

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