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2012年のニューフェイス紹介④<河瀬賢史(かわせまさふみ)>
スポットライトを浴びたのは、昨年5月。新規トーナメントの「とおとうみ浜松オープン」は、大会の地元も地元、開催コースから車でわずか10分というご当地プロが、記念すべき第1回の初日に首位発進。
注目が集まった。最終日は73と崩れて結局37位に終わったが、連日報道陣に囲まれて舞い上がってしまい、大事なことを言いそびれた。
芹澤信雄率いる“チーム芹澤”の一員だが、実は“直”の師匠は芹澤の一番弟子の藤田寛之。しかし会見では、折しも大会直前に、芹澤から受けたアドバイスのことしか語らず、最後まで藤田の名前を出すことはなかった。
「てんぱちゃって・・・。芹澤さんのことばかり喋っちゃって」。
当然、師匠にも嫌味を言われて、落ち込むやら悔やむやら・・・・・・。
しかしそんな本人の反省と後悔も、すぐ翌週に晴らすことが出来たのは幸いだった。ダイヤモンドカップの3日目に4位タイに浮上して2週連続の会見に臨み、今度こそ尊敬する師匠への憧憬の念を思い存分にぶちまけた。そして翌日にはその師匠を2打上回る、自己ベストの4位タイに踏みとどまれたことが、大きな自信に。
42歳を迎えたいまも枯れない探求心と、たゆまぬ努力で進化を続ける藤田に、河瀬も畏敬の念を禁じ得ない。昨年、藤田が初めてマスターズに挑戦したことにも触れて、「本当にすごいとしか言いようがない」と、その人柄も丸ごと人生のお手本にしている。
身長は167センチと体形が似通っていることもあり、ウェアはすべて藤田のお下がりだ。また、その生き様ばかりかスイングも、打ち方も、歩き方も、いつも一番近くで見ているから、自然と師匠に似てくる。
遠目や後ろ姿で「藤田さんかと思った」と、間違われることも多く、それが河瀬には嬉しくて仕方ない。師匠の背中を追い続けた昨シーズン。藤田のそばにぴったりとついて歩き、隙あらば師匠の教えを貪欲に仰いだ甲斐は確かにあった。
昨年は、自身の最終戦となったカシオワールドオープンは、賞金ランク63位で初日を迎えて本人には「まだ何が起きるか分からない」と、不安で仕方なかったが、「お前はもう大丈夫だよ」と、藤田が太鼓判を押してくれていたとおりに結局66位に食い込めば、悲願の初シード入りにも「藤田さんがいてくださったからこそ」と、感謝も深まる。
「これからも、いろいろ学ばせてください・・・・・・!!」と、改めて頭を下げた河瀬。シード元年の今年こそ、師匠のエキスを存分に吸い込んで、パッと開花の年といきたい。