記事

2年連続の受賞! 谷原秀人が新たな境地

2年連続の1位には、さすがに本人も認めざるをえない?! しかし、谷原のテンションは低かった。「まあショットも悪かったですからねえ・・・」。今年もまた平均パット数1位(※)を獲得して、もはや“パットの谷原”との周囲の賞賛の声も「自分としては、それほど上手くなっているという実感はないのですが」と素っ気ないのは、有終の美を飾れなかったという悔しさのせいもある。

今季のツアー最終戦。「ゴルフ日本シリーズJTカップ」は最終日に後輩との最終組で、ちっともチャンスにつかない。たまにチャンスについても入らない。
最後の最後に得意分野が生かせなかった。宮里優作のツアー初優勝を許した。

前日3日目にはあれだけ入ったパット。あの週は平均パット数ランキングで、谷原に続く2位につけていた小田孔明に、顔を合わせるたびに言われた。
小田の故郷の博多弁で「抜くっちゃ、抜くっちゃ・・・って、あいつ風呂場で会うたびにひつこくて」。こう見えても同い年のライバルに、対抗心を剥き出されても涼しい顔で、面白いようにチャンスを決め続けて3日目にして2位タイに浮上。

それが、よりによって松山の4勝に続く、今年2人目の年間複数回Vがかかった最終日に、ぱたりとその勢いが止まってしまえばその翌日は、9日月曜日に行われた「ジャパンゴルフツアー表彰式」で2年連続の平均パット数1位の受賞を受けても、気持ちはさほど盛り上がってこない谷原なのであった。

それでも今年は、三井住友VISA太平洋マスターズで、3年ぶりのツアー通算10勝目をあげて、喜びもさめやらぬままにその翌週に、石川遼とオーストラリアに乗り込んだ。
自身6年ぶり3度目となったワールドカップで、チーム3位に入った。世界舞台で「とても良い収穫になりました」と、今年はそれが、ひとつ本人には感慨深い。2005年にシード入りを果たした米ツアーにも、再び目を向けるきっかけにもなった。
「それを糧に、来年はさらに頑張って行きたいです」と、気持ちも前向き。かねてより、目標に掲げてきた悲願の賞金王獲りに向けても、さらに思いが高まって・・・。

「いやあ、そこらへんは微妙ですね」と苦笑いで、口を濁した。
35歳。たゆまぬトレーニングで鍛え上げたムキムキマンも、「そろそろ体が衰えて来ている気がする」。気持ちと技術の向上にも、近頃はどうにも肉体がついていかないような気配に、不安もちらほら。「最近、疲れてプレー後に飲む元気もない」と大好きなお酒も、ハードなトレーニングも「そこは、ほどほどに頑張る」と年相応に、4年前にひどく肩を壊した反省も胸に、体とじっくり相談しながら取り組む。

近頃は社会貢献活動にもますます力を入れており、平均パット1位の表彰を受けたその足で、自らが立ち上げたジュニアと障害者ゴルファーの支援を目的とした「一般財団法人Green Seed Foundation(グリーンシードファウンデーション)」の設立記念パーティに参加。

発起人として、壇上でマイクを握った。
財団名を和訳すれば「緑の種財団」。
「小さな種から出た小さな芽でも、やがて集まれば緑鮮やかなグリーンになるように、ひとつひとつの善意の心を大切にし、根が広がるように、多くの方たちへ伝わりますように・・・」。
グリーン上でつかんだ2年連続の栄冠も、最初は肩痛の影響で落ちた飛距離を少しでも補うために、小技の技術向上を目指してコツコツと、小さな努力を重ねてきたたまものだった。
これからも、どんな小さな種でも、いつか大きな木に育つことを信じて谷原は、希望の種を蒔きながら歩く。

※パーオンホールのみを対象とした1ホール辺りのパット数で1.7345を記録して、2年連続の平均パット数1位を獲得した谷原には、9日月曜日にパレスホテル東京で行われた「ジャパンゴルフツアー表彰式」で、一般社団法人日本ゴルフツアー機構の諸星裕(もろほしゆたか)副会長より、記念のトロフィを贈りました。

関連記事