こんな強い風の日こそ、とっておきの秘策が生きた。名付けて「女子プロ作戦」。ときどき、テレビで見る女子プロの宮里藍さんや、北田瑠衣さんの「ノースピンで、ぽこん、ぽこんと打つスイング」。
ヘッドスピードを落としてあえてスピンをかけずに打つと、風の抵抗を受けにくい。「オフに、練習がてら、ゲーム感覚でやっていた」。

だからこの日の難条件も、「がっつかずに、ゲームみたいに楽しんでプレーが出来た」。
風とけんかするのもやめて、「届くクラブで打てばいい」。
ティショットを打つたびに、こぼれる笑顔。
「あまりの風に呆れていたから」と笑ったが、そんな心の余裕が、好結果につながった。

ツアー１勝の39歳は、２０１１年からシード権を失ったまま。
昨年のファイナルＱＴも、ランクは56位にとどまって、本当ならこのツアー開幕戦にも出番はなかったが、意外なところから、手がさしのべられた。

演歌歌手の山本譲二さんは、広田と同じ山口県出身で、広田の後援会の会長と同じ高校だった。「そのご縁で親しくしていただいて」。
今大会主催の東建コーポレーションの左右田鑑穂（そうだかんすい）代表取締役社長に、広田の出場を強く推してくださったのも山本さんだ。

ジャパンゴルフツアーはいよいよ今週開けても、自分は趣味の子守りをして過ごすしか仕方ないと考えていたが、思いがけずに仕事を得ることが出来て張り切っている。
「ジョージさんにも、良いニュースを届けられれば」。
恩返しの復活を、胸に期した。

• 広田 悟