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何歳でも関係ない! ベテラン勢も宮崎で復活をにらむ
37歳の井上忠久は、2007年に初シード入り。しかしすぐ翌年に陥落したまま、さまよっている。ファイナルQTランクは62位につけた今年は起死回生をかけて、この宮崎合宿は実施“初年度”の昨年に引き続いて2度目の参加も、初日から3日が過ぎて、つくづくと思うことは「この合宿も確実に内容が進化している」ということ。
「何よりも先生方のおっしゃっておられることが、去年よりもうんと分かりやすいんですよ」。特に、人間の体の動きには、4つのタイプがあるとされる4スタンス理論を提唱する廣戸聡一氏の講義はともすれば、素人目には難解な部分もあったが「今年は心にすとん、と落ちてくる」。
たとえば、合宿2日目のこと。夜の講義で廣戸氏に引っ張り出されたのは、26歳の根田翔太郎。昨年は予選会のセカンドQTの際にひどく寝違えたのをきっかけに、右の首に爆弾をかかえてあちこちの治療院をさまよった。「鍼なんか、何本刺したかもう数えられないくらい」。精密検査を受けても原因が分からず、ただ「打ち方が悪いとか、練習方法がダメだと言われるばかりで」。
結局、次のサードQTで予選落ちを喫して今季はチャレンジトーナメントでさえ、予選会から出場権を狙うしかなくなった。「とにかくこの首をなんとかしたい」。すがる思いで宮崎にやってきた根田の期待を廣戸氏は裏切らなかった。わずか数分の施術で痛みは嘘のようにほとんど消えて、首痛をきっかけに崩れていた体全体のバランスも、あっという間に整った。
まるで魔法を見る思いでその様子を見守っていた井上も、「またしばらくしたら、前の体のクセが出て、戻ってしまうんだとは思う。でも廣戸先生が教えてくださったストレッチ方法やトレーニングを続けていけば、段々と自分で体の管理が出来るようになるんだと思う。そういうメニューを作ってくださっていると感じられる」。
今回の参加者の中にはほかに、2008年に初シード入りを果たしながら、これまた翌年に陥落したままの竹本直哉も、高校時代からの米留学生活を振り返りながら「向こうは選手もトレーナーも大ざっぱ。これほど細やかに、体のことを指導してくださる人はいなかった」。
30年もの月日をかけて研究、開発した身体理論を惜しげもなく伝授してくださるばかりか選手たちにも取り入れやすいようにと指導法にさえ、日々改善と工夫を加えて血の滲むような努力を続けられている廣戸氏には選手たちも頭が下がる。
昨年から数えて2年目のこの宮崎合宿では今年から、普段の講義や朝のトレーニング、またフェニックスカントリークラブでのラウンド合宿でもより互いに情報を共有しあい高め合う目的で、体のタイプ別に分かれて取り組むことになったのだが、そんな些細な工夫さえ選手たちには好評で、2006年にシード落ちを喫したままの中川勝弥も「すごくイメージがしやすいです」。
実は、中川は昨シーズン途中に、4スタンスの診断を別の人物から受けていたのだが、ずっと違和感があった。それでも言われるがまま、スイングやトレーニングを続けてきたのだが、次第に体のあちこちに故障が出始め、「しまいには、腰痛で立てなくなってしまった」。そんな状態で、我ながらよくぞ昨年末のファイナルQTで、ランク24位に食い込めたものだと思う。
「今回は去年の疑念を払拭したくてここの来たのですが、本当に来させてもらって良かったと思います」。廣戸氏に改めて診断を受けて、本当の自分のタイプが判明出来たのが合宿初日。もともと、体の柔軟性は高かったが「教えていただいたとおりにやったら、より柔らかく体が動かせるようになって。とても嬉しいです」。この半年間、続けてきたことを払拭するのは容易ではないが、それでもこのタイミングで本当に助かった。
本当に久しぶりに開幕戦からシーズンインを迎える今季。8年ぶりのシード権復活にむけて、大きな収穫を得た38歳。不惑へのカウントダウンも始まり、ここが正念場だが廣戸氏が講義の中で、よく言われることはケ「ケガとか年齢は言い訳にはならない。それでも頑張れば誰にも日本代表クラスの選手になるチャンスがある」。宮崎での“軌道修正”が、復活への大きなきっかけとなればいい。