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東建ホームメイトカップ 2013

重永亜斗夢(しげながあとむ)が首位タイに【インタビュー動画】

アトムは天馬博士が作ったロボットだが、こちらの亜斗夢は、血も心も通った人間。腹も立てば、イライラもする。

しかし、だからこそツアー初戦の好発進にも成功した。初日の第1組で出ていって、そのままトップタイで戻ってきて「満足ですね」。

親子げんかから生まれたこの日の5アンダーだった。

プロ5年目にして、初出場のこのツアー開幕戦。「まあ記念ですよ、記念」と、息子はわざと悪ぶったが父は、初の本格参戦を果たす息子に付き添った。
バッグを担ぐ雅己さんは、亜斗夢のプレーが気になって仕方ない。

「グリーンで勝手にライン読んだり、口出ししてきます」と笑っていた息子も、4番でアプローチをミス。花道からの3打目を寄せきれずにボギーを打った。
「そしたら今度は親父が文句を言ってきて・・・」。
あまりにもうるさくて、「分かったけん!」と出身の熊本弁で切れたら今度は父が、仕事を放棄だ。

「ボールも拭いてくれなくなって・・・」。
子どもじみたやり方に、息子の我慢もピークに達した。
「そのイライラを、ぶつけた」と次の5番から、怒りの3連続だ。
4メートルのチャンスを沈めると、6番パー3では4番アイアンで5メートルにつけた。
これを沈めて波に乗った。
7番では、8メートルの長いバーディトライをねじ込んで、そっとかたわらの父に目をやると、「ニタニタしていた」。いつもそうなのだ。

こうやって、父親にキレながらプレーしたときに決まって、好スコアが出る。
「去年のQTもそうだった」。ランク3位につけて、今季前半戦の出場権を手に入れたがここまで来るには少々、遠回りをした。

福岡の名門・沖学園高校を出て、日大に進学。だが1年も経たずに、中退をした。
「早くお金を稼ぎたかった」。アマチュアのままでは、いつまでたっても1打の重みを実感できないと思った。
「それでは、時間がもったいないと思った」。周囲の反対を押し切って、2008年にプロ転向したものの、その直後に左手首の付け根を痛めた。

テイクバックで電気のような激しいしびれを感じた。患部を動かすたびに、「パキパキ」と不気味な音がした。「でも原因が分からない」。ただ安静にするしかなかった。練習も出来ず、得意のパットも段々とさび付いていくような気がして不安ばかりが募っていった。

今もいつ再発するか、分からず「びくびくしている」という。それでも、昨年10月に「出来ちゃった婚」。妻と、1月に生まれた娘を抱えて、「追い詰められて、覚悟を決めるしかないと思った」。24歳。若くして、自分も父親になったことで、「頑張らなければ」という勇気が沸いてきた。

「亜斗夢」の名付け親も雅己さんだ。「どんな世界でも、アジアで一番になって欲しいという願いをこめてつけたって」。そんな期待も「僕はそんなの目指してない」と、本人は素っ気ない。
身長170センチに体重は現在58キロ。ひょろっとした体型はプロとしては・・・。「このままじゃ、やってけない」と、自らしゃあしゃあと、「回りからは、今年チャンスとか言われるけれど。たとえドベでも、自分の人生。自分のやった分しか出来ないですから」と背伸びもなく、ありのままの自分を受け止め、良い意味で肝が座っている。

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