記事

ダイヤモンドカップゴルフ 2013

I・J・ジャンは「無」の境地で

2005年のこの大会で、当時はJGTO史上としては最速のツアー初優勝を達成したのが、ジャンだった。デビューから5試合目の快挙に、実力のほどを、知らしめたものだ。

このダイヤモンドカップは毎年、各地の名門コースを回るサーキットトーナメントとして知られるが、そのどれもが、難セッティングであることも、選手の中ではひとつの定説になっている。

当時とコースは違えど今年、大会が4年ぶりに戻ったここ大洗ゴルフ倶楽部は、特にジャンには好きなコースのひとつである。「みんなが難しいといって、伸び悩んでいるときにこそ、耐えれば上に行けるでしょう? そういうコースが僕は好き」と言ったとおりに、2日目にしてしっかりと、優勝争いに加わった。

40歳の熟練の技は、新たな境地が加わりそうだ。所属コースは、開催コースの地元でもある茨城県の霞ヶ浦国際ゴルフコースだ。「そこの社長さんに、こないだ言われたんです。ゴルフは“無の心”が大事だと」。

そう言われて、振り返ってみると、「スイングはこうだとか、失敗したらどうしようとか余計なことを考えてプレーしているときは、たいてい上手くいかない」。
選手仲間を見回しても当てはまった。
「勝てない選手は確かに表情に考えていることが出ていたり、落ち着かない感じだけれど、たとえば藤田さんはいつもどんなときもまったく顔が変わらない。あれこそが“無”ですね」と、賞金王の姿勢からも、その言葉を痛感した。

「社長さんに、言ったんです。僕ももうちょっと日本語を勉強しなければいけないと。そしたらその必要はないって。そんな余計なことは考えず、ただゴルフを楽しみなさいと言われて、気持ちが楽になりました」というジャン。

確かに、社長さんのアドバイスは、ある意味で理にかなっている。
今さら勉強するまでもなく、ジャンの日本語はすでにとても上手だからだ。今日だって「無の境地」について語ってくれたのも、すべて流ちょうな日本語だったから。

関連記事