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ダンロップフェニックス 2014
ホストプロ! 松山英樹が大会史上7人目の日本人覇者に【インタビュー動画】
しかも大会は今年41回と長い歴史の中でも、日本人覇者は、まだ6人しかおらず、今年も宮崎に集結した海外の強豪たちに、「パっと来て勝たれるとまた、日本の男子は何してんだと言われるかもしれない」。そして何より今週はホストプロとして、「勝てないとダメみたいな雰囲気があった」と周囲の期待にも応えたかった。
「結果を出すことが、一番の恩返し」と思うほどにのしかかるプレッシャー。今年米ツアーは「メモリアルトーナメント」で1勝をあげたが今回、感じた重圧はそれ以上だったといってもよく、また「今までこんなに4日間とも集中してプレーしたのもなかった」という。
早くからこの1勝に照準を合わせてきた。スイングも、クラブ調整も開幕直前まで試行錯誤を重ねて、めったに変えないというドライバーも、この大会のために新調して、スタッフの手厚いケアにも支えられ、「もう微調整は必要ない」と言い切れるまでに、準備を整えて臨んだ。
前日3日目には15番の2打目で、元々爆弾を抱える左手首をひねって、ここ3ヶ月は巻かずに済んでいたテーピングで再び患部を守っても「まだ少し痛い」とそんな不利な状況でも、“ホーム”での1勝は絶対に譲れなかった。
同じ最終組のスピースとジョーンズと、最後までもつれにもつれた大混戦は16番の連続ボギーで一歩後退。さらに次の17番のグリーンでは、2つ前の岩田寛が通算15アンダーにして2打差をつけられていることを知り、上から5メートルの「軽いフックライン」は「絶対に入れる」といっそう気合いが入った。
「完全に追いかける立場になったので、逆に吹っ切れた」とさらに火がついた。「久々にイメージ通りに打てた」と会心のバーディで、再び詰め寄った。「最後も入れて終われば凄いカッコいい、とは思ったけれど」と残りは235ヤードから、5番アイアンで左奥のカラーまで持ってきても、パターで5メートルの“イーグルトライ”を逃したことは、苦笑いでも土壇場で食らいつき、最後まで高い集中力を途切らすこともない。
岩田とのプレーオフは「普段は“ちース”とか」。久しぶりの再会にも慣れ親しんだ者同士の挨拶をかわし、東北福祉大のある地元仙台でも「ゆっくりしているときしか会わないし。とても親しくしてもらっている先輩だし、やりにくい」と、内心の葛藤を押し殺して松山は、鬼になった。
「ちょっとでも、隙を見せたら負ける」。
後輩の殺気は先輩にも伝わっていて、「いつもと違って、勝負師の顔」と察知しながらサドンデスの18番ティで、握手をかわした岩田。ティショットを右に曲げ、林からの脱出も木に当てた。さらに木の根元から打った3打目は50センチも前に行かず、4打目もまたラフに入れ、まるで悪夢の連鎖のような岩田に松山は、「まさか、岩田さんがあんなミスをするとは思わず」。目も当てられない気まずさも「自分は、自分のプレーだと思った」と勝負事には容赦なく、「態度が悪いと思われても、それくらいの気持ちがないと、勝てないと思った」と、松山はフェアウェイバンカーからの2打目を丁寧に刻んで手堅くパーを拾って「こんなに嬉しいことも、最近ない」と大会史上7人目の日本人覇者に輝いたホストプロが、久しぶりの日本で存分に笑顔を振りまいた。
今週は、改めて“ホーム”の素晴らしさに気付かされた4日間となった。日本を飛び出したことで、分かった。「行く前は、携帯が鳴ったらなんで、とか思っていたけれど。今年はアメリカやアジアでプレーをして久しぶりに帰ってきて思うのは、日本のギャラリーのみなさんのマナーの良さ。凄くプレーがしやすい環境だと感じた」。スピースも言った。「日本のギャラリーは最高」と、今ならそんな招待選手たちの気持ちが分かる。
たくさんの暖かな声援にも、勝って報いたい気持ちはいっそう募り、久しぶりの日本で成長のあとも見せられた。
ここフェニックスカントリークラブは、粘りつくような洋芝も「去年はラフからのアプローチもしんどいな、と思ったけれど。今年は2打目も、気にすることなく打てた」と、ラフからでも軽々と脱出して、いくつもの見せ場を作った。
4日間ともスピースとの直接対決は「今日は互いにちぐはぐだったし、そのせいで他の選手にチャンスを作ってしまった」と、そこは若い2人の反省材料として、「今後はプレッシャーがかかったときのプレーをもっと磨いていく。これからもジョーダンに負けないようにやっていく」。切磋琢磨を誓った視線の先には、さらに大きな目標がある。
「今週もたくさんのギャラリーが来てくださったし、来年もまた、みなさんの前で少しでも多くプレーしたい気持ちはある」。とはいえ、このあとまた主戦場に舞い戻り、休む間もなく来春もまた、海の向こうで新年を迎える。またしばらく日本を留守にする。帰りを待ちわびるファンには、まず吉報で報いる。
「次はメジャーで勝ちたいと思います」。
ゴルフの技も心も、また一段と逞しくなって帰ってきても、やはり言葉は不器用で、口べたなところも変わらないが、日本で久しぶりの優勝スピーチには以前と変わらず、胸一杯の思いがこもっていた。