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THE SINGHA CORPORATION THAILAND OPEN 2015
進んで日の丸を背負った平本穏が、暫定の6位タイ浮上
「・・・じゃかましいわ!」と出身の広島弁で、先輩の後輩いじりにも鋭く切り返した“イラ本”こと平本穏。でもそれこそ、この日2日目に65をマークした原動力だった。
ジャパンゴルフツアーと共同主管のワンアジアのスコア速報のホームページは、選手名の横に、国旗がたなびく。上位に韓国勢がひしめいて、「凄いなやっぱ」とそこは感心しきりでも、問題は「日の丸が2ページ目にいかなければ見られないこと」。
平本はこの現実に、「イラっと来た」。
それは今季の日本ツアーが開幕から3戦を、外国勢が独占したときの気持ちとも似ている。
「優勝した選手には、素直におめでとうと言える。そこに個人的な感情はない」。同じフィールドで戦う者として、勝者をたたえる気持ちに偽りはない。「一番強い者が勝つ」。そこになんの他意はない。しかし「それを見た、ファンの気持ちはどうか」。自分がもしその立場なら、やっぱり「日本選手は何してんだ」と思うだろう。
今週だって、スコア速報の上位に、ひとつも日本勢の名前を見つけられなかったら、ファンはがっかりするだろう。
その心情を思えばこそ「俺がやったる!」。リーダーボードに一つでも日の丸を増やすため。日本で吉報を待つファンのためにも、29歳の日本男児が立ち上がった。とりわけ今大会のように、ワンアジアと日本ツアーの共同主管で行われるトーナメントはなおさら「日の丸を背負うつもりでやらないと!」と、気合いが入った。
「てめえらには負けられねえ!」と、とことん強気の“イラ本”も、開催コースが“ホーム”だったらわからなかった。意外と周囲の視線を気にするたちは、むしろ「国内のほうが緊張する」という。「応援してくれる人の期待に応えなきゃとか。でも海外なら、日本人のギャラリーもほとんどいない」。同組の選手も、この日はデービッド・スメイルは、いつも日本で一緒に戦っている仲間でもあるが、それでも皆外国人選手で「何と思われてもかまわない」。
日本でたとえば大御所の選手と回ろうものなら、「ああ、こいつはそうやって打つんだというような。勝手な被害妄想というか、何かこちらを見抜かれているような」。そんな居心地の悪さも、こちらではない。
「リラックスしてやりやすい」。伸び伸びと、スコアを伸ばした。
熱帯地方に特有の目が強い芝目は国内トーナメントで唯一の高麗グリーンがウリの「KBCオーガスタ」。今年はライザップを冠スポンサーに迎えて行われる真夏の祭典を参考に、「遊び心じゃないけれど。高麗グリーンは、あまり考えすぎずに適当に打つ」。
バミューダ芝のラフは、7月のセガサミーカップ。会場のザ・ノースカントリーゴルフクラブは「あのコースも、“わらじ”のターフが飛んでいく。あのコースのイメージでやった」と昨季はいわゆる第二シードの賞金ランク68位で、初シード入りを果たした経験を駆使して、公言どおりにリーダーボードに名前を載せて、「日本にはこんな選手もいるんだと。知ってもらうのにも良いきっかけになりました」。
まずは、ひとつノルマを達成だ。
そしていよいよプロ8年目にして迎えた初優勝のチャンスは故郷から、遠く離れた異国の地。「国内でやるよりはプレッシャーもないし、1コ勝つといい勘違いをして日本でも、という気持ちになるのでは」。こうなったら最終日こそ、リーダーボードのてっぺんに日の丸を飾りたい。