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シニアは最下位の3位にも
御年72歳は、会長推薦を受けて、「またこの舞台に立てたことだけで十分だよ」。しみじみと言った青木。直道が、苦笑した。「ほんと、昔は俺たち、みんな鬼のような顔でやっていたのにね。今はえびす様みたい。歳取って、すっかり優しくなっちゃって」とは確かに、ゴルフ界の一時代を築いてきた伝説の男たちも、うら若き乙女たちには鼻の下を長くして、いま絶頂期の男子には「俺も昔はあれくらい飛んでた」と恨めしげに多少、飛距離は落ちても、ピンを刺すショットとグリーン回りの技の数々で女子も男子も凌駕して、最後までベテランたちが渾身プレーで魅せた。
ゆるゆるゴルフの奥田靖己と、鉄人・室田。今年は、レギュラーツアーで最年長のシードに返り咲いた“レジェンド”も、「この中では、僕らも若手」と、相変わらず「僕は女子を応援してる。あんなに可愛いのに一杯バーディ取って、尊敬してる」との室田の魂胆も女子チームにはバレていた。
「室田さんはあんなことを言いながら、いっつも真剣に勝負をしかけてくるから」とは女子の最年長メンバーの大山志保さん。毎度、敵を油断させる手口も今年は特に、直道も言ったように「青木キャプテンをぜひとも胴上げしたかった」。もっとも、青木の大きな体はレジェンドたちすら持てあまし、「きっと僕らは担げないから、そこはJGTOに任して、それでも落っことしちゃったら安全に、バンカーに」と、そこまで具体的な青写真も、実現はかなわなくても、レジェンドたちは胸一杯。
後半の個人戦は池田と、成田美寿々選手の年齢を足してもやっと「50」は、「今年、青木さんのプロ周年でもある」と、池田もこの場に立ち会えたことだけでも感慨深い。
「この年になっても、若い子たちとやれる。俺はなんて幸せものなんだ」と何度も声を詰まらせた青木。17番では絶妙のバンカーショットに、成田選手から羨望の眼差しを浴びて、「いまのはどうやって打たれたのですか?!」と、教えを乞われて目尻が下がる。
前半のチーム戦では中嶋との“AN”ペアに、この日、一番の注目を集めて「これがゴルフの良さなんだ」と、改めてゴルフ愛に浸った1日。
「3位でいいよ、十分だ」と青木。「プロ50年目にこんなに楽しい1日を過ごさせてもらった。この場に立てるだけで嬉しかった。一緒に過ごしてくれたみんなに礼を言いたい。ありがとう。思い出の1日になりました」。
2005年から始まった今大会は、日立グループの支援を受けて、今年10年目を迎えて、もはや選手たちにとっても年の瀬の風物詩と言ってもいい恒例行事となり毎年、男子と女子とシニアの3ツアーの貴重な社交の場となり、年齢も性別も超えた戦いは、恵まれない子どもたちや、震災で心に傷を負った人たちに少しでも役に立ちたいと、普段はそれぞれの舞台で戦う“3ツアーズ”の面々もその思いでいつも心がひとつになれる。
こんな素晴らしい大会は、他にない。
「社長〜!!」と、ホールアウト後の会見場で主催者に、選手を代表して大声で呼びかけた青木。「来年も再来年もこれからも、ずっと長く大会を続けていただけるように・・・。宜しくお願いします!」。大会は歴史を重ねるごとに、レジェンドたちの熱き思いも引き継がれていく。