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ツアー復帰! 田島創志(たじまそうし)は今年試練の38歳
チャレンジトーナメントですら、主催者推薦を頂いてしか出られず、“開幕戦”の「Novil Cup(ノヴィルカップ)」はどうにか出場にこぎつけても、「ここでコケたら今年もまた俺にはもう後がない。ここでダメなら引退だ」と並々ならぬ覚悟で“開幕戦”を制して、「もう一度チャンスをもらえた」。
首はつながったが、「そのあとは、予選落ちが立て続いて悟った。このままでは俺は勝負の世界では戦えない、と」。
38歳。早ベテランと言われる年齢にさしかかり、ゴルフの何が悪いというわけではない。つい先月まで山にこもってオフトレのスキー合宿や、とりわけランニングは今月22日に行われる東京マラソンへの、自身2度目のエントリーも済ませており、1日20キロは今も軽く走るなど、「体もまだまだ動くし」。しかし、ツアーという勝負の世界で生き残っていくにはどうなのか。「今のままじゃダメだと思った。何か変えないと。人に勝たなくちゃ残っていけない世界に身を置くものとして、今の気持ちじゃ俺は戦えないと思った」。
チャレンジトーナメントの賞金ランクは11位につけて、今季前半戦の出場権を取り返したと言っても、今の気持ちのままシーズンに突入しても、「今までよく頑張ったなと言って、俺はもう今年にも引退するしかなくなるだろう」と、早くも2015年末の自らの行く末を思ったときに、激しくこみ上げてきた未練。
「まだ引退したくない。もうちょっと頑張りたい」。
今年3年目の開催を迎えたJGTO主催の宮崎合宿「JGTOゴルフ強化セミナーin宮崎フェニックス・シーガイア・リゾート 〜オリンピックを目指して〜」への初参加を決めたのも、現役時代を少しでも引き延ばしたかったから。
「自分の力はまだまだこれだけじゃない」というのを証明してみたかったから。「まだまだ、自分の中に、秘めた力はあるはずで、しかし俺はまだそれを使いきれていない。解放しきれていないのは、解放する方法を、俺はまだ知らないからだろう。そんなところで右往左往している自分はもう嫌だったから。自分の持っている力を今後どう解き放てるか。その方法を知るきっかけを、この合宿で掴みたかった」と、田島は言う。
それだけに、今月2日から始まった今年2回目のこの強化合宿に向かう田島には、初日から鬼気迫るものがあった。もともと何事も、熱い気持ちを全面に出して取り組む男だ。「やるからには一切、手は抜かない」と、他の参加24人の誰にも負けないくらいの気合いと気迫で朝から晩まで汗を流した。
今回の合宿の講義の中心でもある廣戸聡一先生の「フォースタンス理論」のことは、順天堂大学の大学院医学研究科の研究生でもある横田真一からもたまに話を聞いて、なんとなく概要は知っていた。「でも今まで“根掘り葉掘り”まで行かなかったのは、“俺にはまだ必要ない”と思っていた部分があるから」と打ち明ける。
それは、何も田島だけではなくて、長くこの世界でやってきたベテラン選手ほど、今までの習慣や、信念が突き崩されるのを嫌がってか、あえて手を出さない、というのが大半の中で、田島も例外なく見て見ぬふりを続けてきたが、引退という言葉が現実味を帯びて身に迫ってきた今は「今までの自分の方法ではどうしようも出来なかったのだから。何か他に新しいのを自分の中に入れてみるしかない」と不惑を目前に、ようやく自ら渦中に飛び込んでみようとする決意が出来た。
初日から、内容の濃い講義は「廣戸先生やそのお弟子さんの方々や、2日目に来てくださった青木さん、鈴木(規夫)さんもまたしかりで。その世界のスペシャリストの方々のお話しは、僕もそこに行き着きたいなと思わせられることばかりで昨日なんか、青木さんのショットの音を聞いていたら、もう70歳も過ぎてもこんな音を出しているのに俺はダメだな、と。刺激された」と、耳に焼き付けた。
「自分ももう年齢が年齢だし、これ以上少しも時間を無駄に出来ない状況で、今回得た知識や教訓を生かすも殺すも自分次第。きっかけはいただいたから。これをこれから何度でも反復練習して、覚えて、どれだけ吸収出来るか。プレッシャーの中で、いかに出していけるか。試されていると思う」と、一度覚悟を決めた男の言葉はどれもこれもが力強い。
並々ならぬ決意で迎える2015年。久しぶりに舞い戻るツアーの舞台は「ファンのみなさんに、夢を見てもらう場所」との思いがある。「そこで俺たちが、夢を見せることが出来なくなったら終わりだから。それが出来なくなったらいなくなってもいいかな、と思うから」。依然として“引退”の二文字と、背中合わせで今シーズンも過ごすつもり。
「今年ダメだったらやめるって、そういうギリギリのところにいながらも、あの舞台に立つ限りは、ゴルフを楽しむ姿勢を少しでも、見せられたらいいな」。
人々の心を震えさすような、ドラマチックな復活劇も見せられたら。