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圧倒的強さで2度目の日本一! 来季は五輪で世界一?!
3期目の選手会長は、「俺の今年の目標を全部、キョンテに持って行かれた」と、嘆いた。「最多勝利で賞金王」との公約を掲げた池田であったが、シーズン最終戦を待たずに夢破れて、「今年の庚泰(キョンテ)は本当に強かった」と褒められ、いつもの照れくさそうなあの笑顔。
「僕も2年くらい前は凄く悪い時期があり、今年はなんとか1勝をと思っていたら、これから先のゴルフ人生でもこんなに勝てないだろうというくらいに勝てた」と、6月の「シンハコーポレーションタイランド選手権」から一気に今季5勝を挙げて、いったいいくつの賞を獲ったのか。
総合司会のデイヴ・フロム氏と、岩瀬惠子アナウンサーに、この日はいったい幾度その名を呼ばれたか。
そのたびに、舞台の袖でひときわ大きな拍手を送った“キョンテファミリー”。韓国から祝福に駆けつけた父母に加えて2度目の戴冠は、何が嬉しいって、新しい家族が一緒に祝ってくれること。「1月に結婚しまして。4月には、子どもも生まれまして。人生が凄く変わって頑張らなければいけない、と。その中で、賞金王になれたことは本当に嬉しい」。
ベビーカーで駆けつけた新妻に、壇上からちらりと視線を送って静かに微笑む。「今年は本当に、嬉しいことしなかった」と鬼はまぶしいスポットライトの下で、胸一杯の幸せを噛みしめた。
秋には、世界ゴルフ選手権「HSBCチャンピオンズ」で体調を崩して、追われる身のシーズン終盤は「自分では最後まで集中しろと、言い聞かせるんですけど出来なくて」。2位以下を獲得賞金でかなり引き離しているとは言っても、終盤に調子を上げてきた優作や、池田勇太の存在はやはり、気になって仕方なく、「毎週のようにプレッシャーもあり、最後のほうは本当にキツかった」とは、鬼の正直な胸の内だ。
2度目の栄冠にも相変わらずこの人は、デビュー当時とちっとも変わらず、至福の時も、たとえドン底でもいつも静かな笑みを絶やさず、「僕ら韓国の選手は、日本のギャラリーの皆さんにも凄く応援してもらっているから。サインをするときにも笑顔でいたりすることとか、先輩のSKさんや、IJさんが取り組んでいる被災地支援のチャリティ活動などもそうだけど、僕らはそういうことで返していくしかない」。
最愛の家族と偉業達成の喜びを、分かち合いながらも庚泰(キョンテ)はある懸念を抱いていた。今季、後半戦から特に言われ始めた男子ゴルフのギャラリー動員数の減少は、「今年、僕ら外国選手が勝つ事が、多かったのもあるのではないか?」。自分が再び賞金王に輝いたことでも、拍車がかかったのではないか。
母国韓国でもそうだから、庚泰(キョンテ)にも分かるが、どこのツアーでもギャラリーの自国選手びいきは、どうしたって否めない。日本で活躍する外国人選手という立場として「自分が言うのは難しいのですが」とことわった上で、「日本には凄く良い選手が多いのに。ギャラリーが少ないのはもったいないです。今、女子のほうが(ギャラリー)多いのも、韓国と一緒ですから」。日韓ともに、女子ツアー人気の上昇も合わせて、庚泰(キョンテ)も歯がゆさを感じていた。
「やはり日本ツアーも、日本の若い選手が頑張ったほうが、お客さんも来てくださる」と、相変わらず口調は穏やかでも自分の“独壇場”を許したいまの男子ゴルフの現状に、当事者自ら静かに警鐘を鳴らした。
自身2度目の賞金王に、来季はより忙しい1年となるだろう。「やっぱりメインは日本だけれど。それでも海外の試合は増えるしアメリカと、日本を行き来するのを繰り返したら、体がおかしくなる」。そういう意味でも今年秋に体調不良を訴えたのは、何よりの教訓だった。「このオフは、もっと体を鍛えて来年の準備をします。今年の失敗を生かしたい」と、喜びに溺れることなく鬼はこれからもっと強くなる。
来季の目標は「まずは1勝」と、そこはこれまた謙虚に、それでもふと言葉に熱を帯びたのは、リオ五輪について語ったときだ。
「世界で一番デカいスポーツのイベントは、4年に一度。しかも出場出来るのは2人だけど、とても難しいけどぜひ、僕も今年、出られるように頑張る」。賞金王の念願かなえば日本代表には五輪でまたしても、鬼が立ちはだかることになる。
※賞金ランキング賞の副賞として、バロン・フィリップ・ド・ロスシルド,オリエントのアントニー・グルメルアジアパシフィック代表取締役より、「シャトー・ムートン・ロスチャイルド ウィンテージ2012年」と「ムートン・カデ・レゼルヴ・ボルドー ヴィンテージ2013年」が贈られました。