記事
長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2011
石川遼が最終18番のイーグルで4位タイ
ピンまで15メートルのイーグルパットは「大きくフックしてから、2つのマウンドを使う」。上って、最後は急傾斜で下る。「難しいライン」は1つで沈めるつもりもなかった。
「ショートさせると、また難しい。1メートルなら上出来。2メートルオーバーしても、しょうがない。そこから上りのパットをなんとか2つで決める」と、考えて打った。
それが、思いがけずカップに転がり込んで、大歓声の中で自然と写真のようなポーズになった。
朝から風が強く吹いたこの日2日目は序盤から、ショットがばらついた。ラフに入れたり、オーバーさせたり。距離感も、いまひとつ合っていないのも、仕方なかった。
「いまはスイングの解体作業中」だから。
きっかけは、大会前日の水曜日。全英オープンでの予選落ちをした反省から、アイアンショットの調整を重ねていた。プロアマ戦後の練習場で、ジャンボ尾崎に言われた。
「そのスイングじゃあ球はバラけるだろう」。
昨年11月に「独断」で始めた。バックスウィングを低く上げ、フェースを開いて打つスタイルに、ジャンボがダメ出し。
「あれだけ長いフォロースルーをやっていたお前が、なんでそんな短いのをやっているのか。おかしいだろう」と、問いただされた。
この半年間、取り組んできたことも「全部、やりなおせ」と。
「他の誰かに言われていたら、ダメだったかもしれない。それが、お父さんでも」と、石川は言う。
「それがジャンボさんだから。ジャンボさんのおっしゃっていることは100%正しいと思えたから変えようと思えた」。
ジャンボの言うとおり、インパクトを長く、フォロースルーをしっかりと取ることで、強い球が打てるし方向性も確かに安定する。
「今までの自分は勘違いしていたことに、思い切り気付かされた」と、さっそく新スイングを取り入れたはいいが、それから「まだ2日目」だ。
もちろん、即・完成とはいかないが、この日はショットのブレを、パットで補いスコアを作った。4番は、10メートルものパーパットを拾うなど、「絶対にボギーというところで粘って、というのをメジャーで見せつけられてきたので。そういうのが僕にも、出来るようになってきた」と、胸を張る。
ほかにも、10番では花道から20ヤードのアプローチを直接入れて、バーディを奪った。
13番パー5では左足下がりの第2打で、「今の僕のスイングでは、高い球は望めない」。
ジャンボに仕込まれたばかりのスイングは、2番アイアンを握って低い球で、グリーン手前ののり面にぶつけてピン手前5メートルを捉えた。イーグルチャンスこそ外したが、楽々バーディを奪い、見せ場も作った。
あのときジャンボはこうも言った。「今のお前は難しく考えて難しく打とうとしている」。この言葉にも「ハッとした」という石川は、「ジャンボさんのおかげで僕のゴルフは間違いなく方向転換出来た」としながらも、「お礼を言うのはまだ早い」。
それは結果を出してから。「日曜日には、確信に変わっていると思うので」。
ツアー通算10勝目の今季初Vで、報いてからだ。