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しばしのお別れ(ザ・レジェンド・チャリティプロアマ最終日)
08年に日野皓正さんと、王貞治さんと一緒に立ち上げた。
子どもたちに愛と希望を贈り続けてきた「ザ・レジェンド・チャリティプロアマトーナメント」もこの10回目の記念大会で、いったん終止符を打つことをついに公の場で明らかにした。
発足した当初は「2、3年で」と考えていた。その間、何度も中止の危機を迎えながらも、「また来年も」という周囲の応援や希望の声に奮い立ち、いつの間にか5年、6年と過ぎて今年、ついに10年という歴史と伝説を築きあげることができた。
「大勢の方々に支えられてここまでやってこられた。これこそが、私の財産です」と大勢のファン、関係者と選手たちの前で振り絞った言葉に、ありたっけの謝意を込めた。
新選手会長で、JGTO副会長の石川遼も「この大会をなくしたくない気持ちは強い」と、その閉幕を惜しんだ。
「僕らプロだけでは、この盛り上がりはない」と断じた。青木の意気に感じた大勢の著名人の方々もまた、ボランティアで毎年、花を添えて下さった。
「おかげでゴルフを知らない大勢の方々も、足を運んで下さるいい機会になっていた」と石川は、6年ぶりの出場で改めて痛感したという。
「最初に参加させていただいたときから感じていた。関係者の方々が、力を合わせて作った。本当にあったかい、手作りのトーナメント」。
中でも石川が名前を挙げて、縁の下の功績をたたえたのは青木功のチエ夫人だ。
「チエさんの人を引き寄せる力、縁が素晴らしいなと思う。チエさんのサポートを非常に感じる」との石川の言葉もまた青木の心を慰めてくれる。
「スポンサー集めから、何から。俺よりもかみさんのほうが頑張ってくれた。悪いことは全部かみさんが被ってくれた」と、内助の功にはなおさら感謝の思いが止まらない。
そんな夫婦の結晶でもある大会も、ついに閉幕しなければならないのは「寂しい」と、無念の気持ちは隠しきれないが今年も3000万円を超えるチャリティ金を集めて、のべ3億9000万円余を全国の子どもたちに届けられたことには、この上ない達成感がある。
何にも代えがたいこの充実感を、この先も若い世代が引き継いでいってくれたら。
「私のこの財産を、これからの選手が利用してくれれば。スポンサーの皆さんにも賛同を得て、違った形で続けていけるなら。最後は私もJGTO会長として頭を下げにいってあげるから、という話しは何人かの選手にはしました」。
各界のレジェンドが蒔いて育てた大輪の花。咲かせ続けるのも、意思ある次世代の者たちの頑張り次第だ。
すべてを終えた青木に選手たちが列をなして、この10年の感謝とねぎらいを伝えに来た。惜しまれながら、幕を引く。
「男冥利に尽きるよ」。
一人一人の右手を握り返しながら「また別の形で、皆さんとお会いできたら」。
その日まで、いったんしばしのお別れだ。