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ダンロップフェニックストーナメント 2016
米のブルックス・ケプカが初来日V
思えば昨年5月の「フェニックスオープン」では、松山英樹を下して米ツアー初優勝を飾った。そしてこの日は61を出した池田をも退けた。「今日10アンダーを出した選手に勝てたのは、スペシャルなこと。“フェニックス”は、本当に縁起の良い大会名になった」。不死鳥の名のもとで、どんな接戦も最後は必ず競り勝った。
4打差の大量リードに、余裕で出ていったはずの最終日。前半の8番で、ついに20アンダーの大会新記録に到達して楽勝ムードも、ティショットを大きく右に曲げた10番からやにわに雲行きが怪しくなった。
3日目から共に最終組で回る池田勇太が、猛チャージを仕掛けてきた。
1日怒濤の10アンダーは、「このまま59でも出されたらお手上げだと思った」。
そんな懸念がついに現実味を帯びたのは15番だった。
池田が6メートルのスライスラインをねじ込んできた。
ケプカの目にも「外していたら、2メートルは行き過ぎていた」と見えた劇的バーディでついに並ばれた。
世界ランク21位の火がついた。
「ここからが本当の勝負」と、17番のパー3がまさに分かれ目だった。
7番アイアンを振った池田が先に左1.5メートルに乗せた。
あとから打ったケプカは、さらに近い右1メートル弱にくっつけた。
池田が外し、ケプカが入れた。
再び大会新の通算20アンダーにして、1打リードで迎えた最終ホールこそ「飛距離がアドバンテージになる」。
最後のパー5こそ世界屈指の豪打を武器に「絶対にバーディを獲る」。
もっとも、2メートルの微妙なスライスラインは苦笑いで「ちょっと危なっかしかったね」とこのバーディ締めを、辛くもウィニングパットにすることが出来て、栄光に浸った。
「蒼々たる歴代覇者に、自分の名前を並べることが出来て光栄です」。
今年9月のライダーカップで初の米国選抜に名前を連ねてますます自信を深めた矢先の初来日Vに、「本気でメジャー制覇を狙っていく」と、今季最大の目標も定まった。
プロ人生最初のキャリアを欧州で積み、世界中を旅してきた“逆輸入の飛ばし屋”が、かねてより熱望していた初の日本旅行。
初めての宮崎は神話のふるさと。まさに15番には神がいた?!
左林の奥の2打目は松林に囲まれて、八方塞がり。その中で、射した一筋の光。
前方のテレビ塔が介在しており、2クラブレングス内で、無罰のドロップが出来ることになった。
太い木の根っこが這うライの上で“腕”の見せ所。
「学生時代に研究し尽くした」という“ドロップの極意”は、「パットのラインを読むのと同じ。地面には何があり、球がどういう位置で止まるか。よく見極めて、ボールを落とす」。
おかげで、木と木の隙間の視界がひらけた箇所から2打目を打つことができた。「低いフックボールで打ち出すことが出来てラッキーだった」。あのパーセーブも大きかった。
1打差で逃げ切った18番で、まさに幸運の女神にキス。
今回の来日を、本人以上に熱望していたカノジョと月曜日には東京に出て、3日間のバカンスを過ごす。
ベガルタ仙台女子に在籍するプロサッカー選手のブリタニ−・キャメロンさんとカノジョが大親友だそうで、「一緒に渋谷のスクランブル交差点にも行ってみたい」。待望の再会場所は、決まった?!
最高のお土産も決まった。
優勝副賞の宮崎牛一頭分は、毎年招待外国人選手の羨望の的でもある。
期間中はケプカも例外なく、「あまりにも美味しすぎる」と連日のように頬っぺたを落とした。
生肉の輸出入は審査が通るまでに、煩雑な手続きを極めるが「ぜひ持って帰ってうちで食べたい」。
優勝スピーチでは主催者やギャラリー、ボランティアのみなさんに加えて、今回の来日で、手厚いサポートでもてなしてくれたダンロップのスタッフ全員の名前を一人残らず挙げて、感謝の気持ちを表したケプカだがスタッフには、最後にもっとも頭の痛い仕事が残ってしまったようだ。