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JGTO夏の強化セミナー第二弾(8月5日)
1日の集中講義は今回も、JGTO理事でツアー通算16勝の鈴木規夫と、参加者とのディスカッションから始まった。
今年も開幕からほぼ三分の一以上のスケジュールが過ぎたいま、宮崎での冬合宿で得た知識や知恵を上手く生かして、次々と結果につなげている者が増えているのは喜ばしいことだが一方で、ツアー1勝の甲斐慎太郎も打ち明けたことだが「冬の合宿を体験して、頑張ろうとしすぎていろいろ練習したら、頭の中整理できなくなった」。思うような結果が出せずに悩みを抱えている者も同じだけいて、悲喜こもごものこの約半年間を、互いに包み隠さず打ち明けながら、これから再び突入するシーズン後半戦に向けて、少しでも上昇のヒントをつかもうと、みな猛暑も忘れて真剣そのものだった。
ツアー1勝の38歳、田島創志は昨季はチャレンジトーナメントの賞金ランク11位につけて、久しぶりに今季前半戦の出場権を取り返したと言っても、「いざ試合に入ってみたら、ほかは良いのにドライバーだけが全然ダメで」。当初の不振はただその一点だけだったのに、それをきっかけに悩みは数珠つなぎとなって、ついには自分自身への不信感で、一杯になってしまったという。
冬の宮崎合宿で、せっかく得た新たな知識。「それをやってダメだったら後悔しないけど、やれなくてダメだったことに、今は後悔が残っている」。せっかく新たに得たものを、生かしたいのはやまやまだが「過去の感覚もあるし、元に戻りたくはないんだけど、結局は以前の自分の引き出ししかなくなって、戻るしかなくなった。新しく得たことをやって後悔したなら良かったが、結局やれなくて、それが後悔。後半戦ではなんとかしたい」。
今年2度目の夏合宿も、4スタンス理論の廣戸聡一先生が忙しいスケジュールを調整して、また参加してくださった。「廣戸先生はじめ、レッシュのみなさんに改めて、確認をしてもう一度、後半戦で頑張れたら」(田島)。シーズン折り返しの出直しに賭けて、田島もこの夏合宿に駆けつけた。
開幕前に行った3度にわたる宮崎合宿では青木功、中嶋常幸、髙橋勝成の3人のレジェンドを講師陣に迎えて、例年以上に中身の濃い内容であった。大田和桂介は、冬に髙橋から言われた格言を、今だ胸に刻んで踏ん張っている。
ツアーでも、チャレンジでもほとんど出番がなかった今季前半戦。鈴木にも「今年これまで全然、会わなかったな。どこにおったんだ?」と、冗談交じりに問い詰められても「・・・ご無沙汰しています」と、苦笑いでおどけるしかなかったが、「髙橋さんに言われた、どんな時も勝つ気持ちを忘れちゃいけないとの言葉を今も大切にしている。試合には出られなくても、どんな小さなチャンスも、何が何でも掴む気持ちを忘れちゃいけないと」。
どんなに不遇の時期が続いても、どんな小さな希望でも、絶対に諦めないと改めて誓った夏の1日。
全員の悩みを講師陣が把握したところで、さっそく朝は軸を意識して「ちゃんと立つ」をテーマにした、廣戸先生考案の「リポーズトレーニング」でまずは体を慣らして、どっしりした立ち方と、構えを再確認すればそのあとのパッティング練習や、打撃練習ではその重要性が改めて、ますますはっきりと見えてきた。
今回、改めて得た感覚を大切に持ち帰り、これから今季後半戦に必ず生かす、とめいめい強く胸に誓った選手たち。「自信を持っていけ。胸を張ってやれ」と、鈴木は選手たちを励ました。
「おまえたちは一人じゃない。周りの人間がきっと支えてくれる」と、背中を押した。
終了間際に、廣戸先生に個別レッスンを申し込んだのは甲斐だ。ずっと抱えていたパッティングの悩みを廣戸先生に吐露したところ、甲斐選手はその打ち方でいいんだと言われて目からウロコが落ちた。
「自分では、ずっと治したいと思っていた部分」。失われていた自信がよみがえってきた瞬間だ。
「自分の感覚と、人からどう見られているかは違うんだと。長所と短所はものすごく紙一重なんだな、と。これからは自分が持っているものを、もっと大事にして頑張っていかなければと思った」。
冬の合宿で持ち帰ったものを、自分たちなりに応用して、工夫して過ごしたツアー前半期。知識が増えた分、頭でっかちになって、かえって迷路にはまって苦しんでいた選手たちも、セミナーが終わる頃にはみなこの日の青空のように、晴れた顔をしていた。
しばしの夏休みを利用して「いったん、基本に立ち返った」(廣戸先生)。再び迷路に迷い込んだ時こそこの日の講義を思いだそう。「分からなくなったら、分からなくなったところで立ち止まらないで、うんと後ろに戻ってみてください。実は“一番頭の部分”が抜け落ちているかもしれない」と、廣戸先生はこの日の締めに仰った。
すっかり克服できたと勘違いしていたスタート地点にこそ、大きなヒントが落ちているかもしれないのだ。
基礎練習に徹底的に重きを置いたこの日の夏の強化セミナーでめいめい宿題を完成させて、選手たちはまたそれぞれの主戦場に帰っていった。