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第10回西宮市小学生スナッグゴルフ大会を開催(8月18日)
普段は関西各界セレブのお忍びラウンドで、ひそかに賑わうというこのコースも、休場日のこの日月曜日の8月18日ばかりは子どもたちだけのもの。整備が行き届いた緑の絨毯の上で、残暑の厳しさも吹き飛ばす。1番、17番、18番に設置された特設コースで、にぎやかな歓声がこだました。
2005年からスタートした兵庫県西宮市の「小学生スナッグゴルフ大会」は、スナッグゴルフの草分け的大会である。今年から、練習場の打席場に仕切りのついたてが設置されたり、昨年からは、実体験のために5,6年生には自分でスコアカードを記入してもらうようにしたり、名門コースで繰り広げられる熱戦は、コースのご厚意で振る舞われるお昼のカレーライスも含めて設備も内容も、今となっては羨ましいような環境も、この10回大会にこぎつけるまでには、相当の紆余曲折があった。
「ゴルフで子どもたちに夢を。その一心で続けてきました」とは、大会を主催する西宮ゴルフ協会の芦田通夫・会長。また、実行委員長の上田昭義さんは、遠い目をして「よう10年も続けて来られたもんですわ」。
今年も応募が殺到して、100余人もの参加児童を集めたが、初年度はこうはいかなかった。当時の西宮中学校の校長先生でもあった上田さんらが、大会の開催を呼びかけても「ピンと反応してくれる小学校は、ほとんどなかった」。野球やサッカーなど、花形競技に比べて「ゴルフはほとんど見向きもされなかった」。ましてや当時、スナッグゴルフの認知度は今よりももっと低くて、その意義をなかなか理解してもらえない。「参加児童を集めるだけでも大変でした」(上田さん)。
対象的に、お隣の宝塚市ではスナッグゴルフの浸透が早く、あっという間に盛り上がりを見せていったから、まさに隣の芝生はなんとやらで「どうして西宮でも同じように出来ないのか」。参加児童の保護者に詰め寄られたこともあり、芦田さんや上田さんたちのもどかしさはなおさらだった。
それだけに、今年はついに市民体育大会の競技のひとつとして組み込まれることが決まり、記念大会を機に「西宮市民体育大会 第1回スナッグゴルフの部」とのサブタイトルがついたことにはひとつ、大きく報われた思いだ。「市や教育委員会がようやく競技として認めてくれた」。実行委員のみなさんにはそんなひそかな喜びと充実感を胸に、子どもたちの笑顔を眺め渡した記念大会。
4年生の部で“連覇”を狙った前田烈旺くん(苦楽園小)。しかし今年は塾やら夏期講習やら宿題やら「勉強で相当に追い込まれている」と、練習不足は否めず、残念ながら4位に終わったが、「やっぱり、勉強よりゴルフ。久しぶりに思い切り打ったらスッキリした」と、太陽の下でストレス解消!
「今年は優勝だけを狙ってきた」とは昨年は、その前田くんに敗れて2位に終わった長尾剛平くん(段上小4年)。今年から、大会では団体戦も組み込まれて、同じ組で回る前田くんとはリベンジを誓うライバル同士でありながら、チームメイトという難しい心境の中で、今年もまた個人戦で2位に終わって、再び次回のリベンジを誓った夏。
小林聖心小5年の嶝樹慧琉(さこじゅえる)さんは、かぶっていたプロ仕様のキャップを指差し、「今年はこっち側に、書いてもらうの!」。大会では、2年前からスタート前にジャパンゴルフツアーメンバーによるレッスン会と、模範競技が行われて昨年は阿部裕樹が参加。キャップはそのとき阿部から贈られたもので、つばの左側には阿部のサインもしてある。
今年、その右側の余白にペンを走らせたのは、大場崇浩(おおばたかひろ)。今はまだ、チャレンジトーナメントを主戦場にする36歳は、こんなに大勢の“ギャラリー”の前でドライバーショットを披露したことも、「こんなにワーワー、キャーキャー言われたこともまだない」。サインを求める子どもたちが、引きも切らずに嬉しい悲鳴だ。
すっかりイイ気分で「早くレギュラーツアーで活躍したい」との思いを強くした夏の1日。今大会は10年目を迎えて、まだ十分な追跡調査はされていないが、かつての参加児童の中にはおそらく、プロゴルファーを目指して奮闘中の子もいるはずである。
この日の大場の豪打を目に焼き付けた子たちも、ぜひそのあとに続いて欲しい。「そしてこの中から、いつかプロの試合で活躍する子が出て欲しい」。芦田会長も、そんな夢と希望をますます膨らませた夏の1日。「来年もまた来ます!」。口々に約束してくれた子どもたちの笑顔が、また嬉しさを倍増させる。芦田さん、上田さんをはじめ、今年も厳しい暑さの中で、大会運営やスコアラーでご尽力くださった40余人のボランティアのみなさんのご苦労も報われる。