2010年にプロ入りしたが、シーズンを通じて連戦が実現したのが、やっと10年目の今シーズン。
コロナ禍で行われた昨年の特別QT(6位)での出場優先順位は下位だったが海外勢の入国制限や、隔離の影響で枠が降りてきた16試合で奮闘。
いよいよ、シード争い決着の11月「カシオワールドオープン」は、賞金ランキング62位で迎えた。
上位65人のボーダー線には若干、余裕があったため、周囲は「予選落ちさえしなければ大丈夫と言ってくれる方がほとんどでした」という。
しかしその週、練習日にラウンドしたベテランの谷口徹には「下ばっかり見てないで、稼ぐことを考えろ」と厳しく言われたおかげで「賞金を計算するよりとにかく上で、と思考を変えて挑むことができた」と、大会は26位タイで回りきり、賞金ランキングも下げることなく終えられた。
瞬く間に拡散された”阿部監督”の吉報。
晴れて初シード入りの瞬間を、これほど多くに見守られた選手もなかなかいない。
そうそうたるOBプロを輩出する日大ゴルフ部出身で、すでにシード選手として活躍する重永亜斗夢や永野竜太郎、中西直人は同期。
また、プロ転向後もコーチとして後輩たちを指導し、2015年からは、新たに出身の栃木県・佐野日大高校のゴルフ部監督に就任。
「先輩方やプロ仲間、また、現役の子たちは勿論、卒業して行った子たちも『シードおめでとうございます』と、たくさんメッセージをくれて。本当に嬉しかった」と、監督冥利に尽きる。
JGTO職員にも、コーチ時代に「凄くよくしてもらった」という大学後輩がいて、「練習やトレーニング時は厳しいんですけど、終わったらご飯をごちそうしてくれたり、とても面倒見の良い人。コーチって基本、嫌われ役だと思うんですけど、阿部さんはみんなに慕われていて、誰も嫌う人はいなかった」と、回顧。
「阿部さんに世話になった人は、みんな本当に阿部さんの初シードを喜んでいると思います」と、話していた。
シーズンが終わるなり、「来春には子どもたちの全国大会もありますし、シーズン中はほとんど見てやれなかったので、オフはできるだけ一緒にいてそこに間に合うように、練習の計画を立てて…」と、さっそく頭を巡らせていた阿部監督。
「自分は自分でオフの間もミニツアーに参加したり、試合勘が切れないように。来年は、優勝争いができるように、しっかりと準備と経験を積んで臨みたい」と2022年度は、シード選手との両立も問われる。
ちなみに、多感な高校3年間で、教え子たちにもっとも学んで欲しいことのひとつは、「どうやったらボギーを打たないか」だそうだ。
パーオン率1位を記録した今季のゴルフにこそ、そのヒントが凝縮している。