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JGTO Novil FINAL 2014

「ゴルフ人生の中ではいい経験をした」甲斐慎太郎

試合が終わって、表彰式も終わり、優勝者とチャレンジ賞金ランキング9位までの選手が記念撮影を終え、クラブハウスに戻るときだった。今平周吾と甲斐慎太郎が並んで歩いていた。今平が「抜かれると思っていました」というと、甲斐は苦笑いを浮かべた。もちろん優勝を狙っていなかったわけではない。甲斐には、逆転でチャレンジ賞金王の可能性もあったのだ。最終日は10番ホールからのスタート。いわゆる「裏街道」だ。しかし、首位とは4打差。十分逆転可能な射程距離だったのだ。
前半は2バーディ、ノーボギーで、通算2アンダーとする。さらにハーフターン直後の1番でもバーディを奪い、3アンダーとした。残りホールのプレー次第では、まだ分からなかった。だが、2番ダブルボギー、4番ボギーで、その可能性はなくなった。

結局、通算イーブンパーの27位タイとなり、チャレンジ賞金ランキング2位でシーズンを終えた。最後は「良いプレーは出来なかった。疲れていたのかもしれない。賞金王も狙っていたけど、ベストを尽くそうと思っていた。良かった」と、まずは来年のツアー前半戦の出場優先権を獲得できて、ほっとした様子だ。2011年にツアーのシード権を失って、「すべてを失うような気がした」。しかし、実際はそうではなく、むしろ「ゴルフができる喜びを感じた」という。つまり、チャレンジを主戦場として過ごした、この3年間は無駄ではなく「ゴルフ人生の中ではいい経験をした」と思えるという。奇しくも今平もまったく異なる時間と場所で話を聞いたのだが、チャレンジ賞金王を争った2人が同じように「この3年間の経験が今後に活きる」と話していたのが、印象的だった。何かその2人が戦いを終えて、笑顔を交えながら話をしている姿に胸を打たれる思いがした。それぞれに悩み、苦しんだ時期を過ごし、ようやく来年ツアーに出場できるようになったのだ。

甲斐は「調子が悪いときは、グリーンを外したくないと思って、無理にピンを狙っていってしまった。簡単にパーを取ろうと思ってしまう。でも、10メートルのパーパットが入ってもパー」と、知らぬ間に心理的に追い込まれていたことを吐露した。「精神的に余裕がなかった」と反省する。だが、今は違う。苦しい時期を過ごしてきたことで、成長した部分がある。あとは体調面だけである。「体は徐々に衰えていく。20代のときとは体の疲れ方も違う。練習方法や練習量を考えて、メリハリをつけて調整したい」と抱負を語った。技術的には「ミスしたときに簡単にボギーを打たないように、アプローチ、パットを」磨きたい。最後にこれまで「応援してくださる方々に喜んでもらえように、恩返しをしたい」とツアーでの活躍を誓った。来年の彼のプレー振りが本人も言うように「楽しみ」だ。

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