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ジャパンゴルフツアー表彰式を開催(12月5日)

悲願達成から一夜明け、賞金王は考えた。初めてのこの晴れ舞台に、もっともふさわしい晴れ着は何か。最初にピン・・・と来たのは、日本でもっとも強いプロゴルファーらしく「和装」。
ザ・ニッポン男児の羽織袴はどうだろう?!
いやいや・・・、それはさすがに奇をてらいすぎか。
やっぱり王道のタキシードがいいか。

いつもきっぱり生きる道を決めてきた男が珍しく決めかねて、相談を持ちかけた相手はゴルフ界のレジェンド。
世界のアオキは今、男子ゴルフの顔でもある。今年、JGTO新会長に就任した青木功。

5日月曜日は、都内のホテルでJGTOが主催する恒例の年間表彰式。各部門別ランキングで1位に立った選手を称える晴れの場は、スポンサーや関係者やゴルフファンのみなさんに、選手たちから直々に、この1年の感謝の気持ちを表す大事なミッション。

ホストに恥をかかすわけにはいかない。
「青木さん、実は今日、着たい服が2択あるんだけれど・・・」。
2択の中身を聞くなり青木が即答した結果、こちらに決まった。
「私はめったに青木さんのいうことを、聞かないんですけれども、今日は素直に従いました」と壇上で笑わせた。

袴姿の賞金王も、見てみたかった気もちらりとするが、蝶ネクタイで凜々しくキメて、もっとも1年、印象を残した選手として選ばれる「ゴルフ記者賞」と、「MIP賞」を含めて7冠をひっさげて登壇した。

つい前日に終えたばかりの「ゴルフ日本シリーズJTカップ」をもって、2016年のシーズンが幕を閉じた。互いに、互いの存在がなければ、「今年の自分の活躍はなかった」と声を揃えて称え合った。最後まで、激しくもつれにもつれた谷原秀人との賞金レースもついに決着の時を迎えた。

夢にまで見た賞金王は、しかし「最後に勝って決める」と並々ならぬ覚悟で最終日に臨んだだけに、「最後は急に交通事故が起きたみたい」。
同じ最終組の朴相賢(パクサンヒョン)に、最終ホールで2013年の優作ばりのチップインバーディをキメられて、あっさり今季4勝目をさらわれ、唖然呆然。
かねてより公約だった“最多勝利の賞金王”の肩書きを奪われて、「悔しさで頭がいっぱい」。
おかげで、日本テレビの中継も、どこにも歓喜の賞金王の姿が映っておらずに、「どうなってんだ、と。ちっとも嬉しそうな場面がなかった、と」。各方面よりおしかりを受けて、反省しきり。

「昨日はそれくらい、勝ちに行っていたので。スミマセン」と、日頃の感謝とともに、改めて初の戴冠の喜びを語った。
「一晩明けまして、今日はこうして7つも賞を頂きました。自分になりに頑張ってきたことで、念願が叶った。ひと回り大きくなれた。嬉しいな、という気持ちが今、沸いてきているところです」。

今年はいったんそれまで3年間の重責を下ろし、選手会長職を先輩の優作に託して、ひたすら自分の道を邁進した1年でもあった。
筋トレの成果は春先にさっそく出て、5月のパナソニックオープンで自身最速の年間1勝目を飾り、弾みをつけた。
海外メジャー3戦と、8月にはリオ五輪と、忙しく世界中を飛び回る中で、ひとつひとつ地道に結果を紡ぎ、秋のANAオープンで、最終ホールでボギーを打ってその年最初の2位に終わった悔しさを契機に終盤、怒濤の追い上げで、谷原に食いついた。
賞金王のほかに、MVPと、平均ストロークと平均パット、バーディ率と、主要部門を独り占めにした。

昨年まで3期連続の選手会長職で、改めて思い知らされたことがあった。
今年は、「人を育てる」をスローガンに、JGTOの新会長として立ち上がった青木のもとで、日頃からのファンサービスやスポンサーへのおもてなしに徹するのはもはや当たり前のこととして、「やっぱり、最後は選手一人一人が良いプレーで盛り上げていかなければいけない」。

今年は“本業”でこそ、魅せると誓った。
勝ちに行った前日のシーズン最終戦で敗れたのは残念だったがそれでも2位は自身の大会ベストフィニッシュであり、4日間とも60台を出せたのも初めてだった。
熱い思いと実行力を、最後まで保ったまま走り抜けられたことが、2016年の賞金王には何よりも満足だ。
  • 青木さんのいうとおり、今日はタキシードにしておいて良かった! 最後まで競り合った谷原と共に

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