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青木功がJGTO新会長に就任
過去5度の賞金王に輝いたレジェンドに、重責のバトンを渡した海老沢は「全会一致で青木さんに決まった。青木さんが、これまで培われてきた経験を後輩に受け継ぎ、幅広い人脈をもって、ゴルフ界の発展に寄与されることを願っている」と、会長退任の挨拶で結んだ。
神妙な顔でこれを受けた青木は「海老沢さんが私に託されたものは、さぞかし重いんだろうと思う」。決意の英断だった。実は今年に入って、ジャパンゴルフツアー選手会の新会長に就任した宮里優作や、同副会長の横田真一から再三の就任要請も、幾度となく首を横に振ってきた。
「私は、プレーヤーとして全うしようと思っていたから」。プロゴルファーとして、生涯現役を貫くというのなら、今回の人事はとうてい受け入れられるものではない。両立が出来るなどという、甘いものではない。
「しかし、優作や横田くんたちの気迫に負けた。それだけ頼りにしてくれるなら、と」。この世界で一時代を築いてきたからこそ、というひそかな思いも以前からあった。「これだけ長くゴルフ界でお世話になってきたのだから。少しでも貢献、還元したいという気持ちは今までもあったから」。
目下、男子ゴルフの人気回復が最重要課題と叫ばれる中で、いばらの道も覚悟の上だ。
「今まではただ、ゴルフだけでやってきた人間だから。会長という職そのものが難しい部分はあるかもしれない。何年やれるかも分からない。いろんなものも、ぶつかってくるだろう。でも、やると決めたからには私も人生を賭けて、一生懸命にとことんやる。与えられた時間の中で、出来る限りのことを達成したいと思っている」。
そのためにも脇を固める新組織は、考えに考え抜いた布陣である。青木のたっての「ぜひ副会長に」との要請をうけたのは、松井功や大西久光ら。
いまは公益社団法人日本プロゴルフ協会(PGA)の相談役をつとめる松井は同協会で、2006年から6年の会長経験を持つ。また大西は、ゴルフトーナメントの競技運営会社「ダンロップスポーツエンタープライズ」を立ち上げた経歴を持ち、現在のトーナメントの礎を築いた草分け的存在は、豊富な経験と無尽蔵の知識に広い人脈をも持ちあわせている。
青木とは互いに“我孫子一門”としてレギュラー、シニアを通じて旧知の仲でもある松井。トーナメント管理担当として、「大親友でもある青木さんと、私の人生最後の大勝負。良いニュースをみなさんにお届け出来るように頑張ってまいりたい」。
政策担当の大西も「男子ツアーがもう一度、活性化しないとゴルフ界全体も、盛り上がらない。いま米ツアーには日本人選手が3人いるが、本当は10人くらい行けるようでないと、本当の意味での活性化にはならない。海外で、日本人選手は戦う前からコースに負けている」。そのためにも環境改善と、試合数の増加が急務と説いて「その具体的な案を提案してまいりたい」。
総会後に行われた記者会見ではちょうどいま、米ツアー参戦中の優作にかわって、マイクを握った選手会副会長の横田は、「青木さんはようやく重い腰を上げてくださった」と新会長の誕生を喜び、「リアル中のリアルが集まった構成になった」と、より徹底してツアーの現場に精通した新人事に目を見張った。
「海老沢(前)会長には僕ら選手がだらしなく、視聴率が取れない中でも試合数を維持していただいたばかりか、賞金総額のアップなど、大変ご尽力をいただいた。組織を構築しなおし、サポートしてきてくださった。これまでの海老沢さんの力と青木さんの力。両輪の力をお借りして、僕ら選手も弾みをつけていきたい」(横田)。
このほど、青木・新体制が掲げた第一の理念は「人を育む」。若い力の技術の向上以上に、ファンに、社会に、よりいっそう愛される人材の育成を目指して、青木は生涯のライバルにも手も借りることにしたという。
尾崎将司を特別顧問に迎えて、「ジャンボと一緒に何かひとつでも、ゴルフ界に返せることがあるんじゃないか。自分たちが経験してきたものを伝えて、若い人たちがそれぞれ意識するようになって、実戦できるようになれば少しは良くなっていくんじゃないか。賭けてみたい気持ちがある」。
また、そんな“AO”の伝達役として、丸山茂樹を相談役に据えて「自分たちと若い選手では、おじいちゃんと孫みたい。喋ると、押しつけがましくなってしまうようなところを、丸山くんにクッションになってもらうという形」(青木)といったように、丸山のほかにもツアー1勝の田島創志やベテランの佐藤信人、前選手会長の池田勇太に、シニアの渡辺司らプロゴルファーも理事に名を連ねて(別ページの新役員一覧を参照)、青木を支えていくことになった。
「私が会長になったからといって、すぐ盛り上がるものでもない。一番は、選手たちの意識。俺が引っ張っていくんだっていう気持ちはあっても、今の若い人たちはおとなしいのか。もっと個々がアピールをすれば、責任感も出てくる。荒々しい闘争心を出していくことで、活性化していくんじゃないか。そういうことも、これから話していかなければと思っている」などと、就任会見では新会長として熱い思いのたけを、次々と吐き出す一方で、「自分も選手として、何試合かは出ていきたい。選手会にも少しは許されているんだ」と、ちらりと見せたプロの未練も、傍らの松井にはピシャリと、「試合に出ることより、いまはツアーを立て直すことが先じゃないか。僕は、出させるつもりはないよ。かわりに私と一緒に政財界を回ってもらいますよ。回りながら、選手の意識改革をしていきますよ!」。
「・・・分かっていますよ!!」と、このときばかりは苦笑い。世界のアオキもいよいよ観念して、これからまずは2年の任期を全うする覚悟だ。