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「遼イズム」【最終回】セルフプレーはゴルフの原点

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昨年の「日本プロ」で3年ぶりの復活優勝を、自身初のプロ日本一で飾った。
昨シーズンは、その後さらに2勝を重ねて計3勝。
07年の史上最年少アマVも含めてツアー通算17勝。
どのシーンにも、感動ドラマがある。
奇跡のゴルフで伝説を作り続ける。
石川遼の頭の中身を探ってみるシリーズも、これがいよいよ最終回。

今年の「日本プロ」は来年の延期が決まったが、会場の日光カンツリー倶楽部を回る機会を得た。
もともと、同コースは本年度の開催コースだ。
しかし、新型コロナウィルスの影響で、会場も来年に繰り延べることが決まった。
「今年のために、ずっと準備をされてきたのに、それをまたもう1年となると本当にすごく大変。コースさんのご苦労に感謝申し上げるとともに、僕たちのプレーをファンの方々に届けられる機会を作っていただいて感謝しています」と、石川。

改めて連覇に挑む来年の再訪を楽しみに、今年は昨年覇者として、倉本昌弘PGA会長らと7月5日に放映予定のチャリティテレビマッチ(15時ー16時25分、日本テレビ系列)で、貢献プレーにつとめてきた。

今後も医療従事者の方々への支援など、個人的にも次の新たなチャリティ方法を思案しているようで、「スポーツの力でさらに支援の輪を広げていければ」。
第二波への警戒も続く中、今も最前線で闘う人々への畏敬と感謝の思いで一杯だ。

今週になって、昨年の「日本プロ」に続く自身初の2試合連続Vを達成した「セガサミーカップ」の中止も発表された。
今年、石川の連覇がかかっていたトーナメントは、2試合続けてとりやめとなった。

男子ゴルフは今年、これで12試合の中止が決まった。

石川も、JGTO副会長の立場でリモート参加した先月の理事会では20ー21年のシーズン統合が決定されたが、今年の日程が無事終了したのはまだ1月の「SMBCシンガポールオープン」だけ。
「長いシーズンにはなるんですけど、まだ1試合も再開出来ていない状況。本当に、これからどんな感じになっていくのか。なんともいえない気持ちです」。

米ツアーは先月、再開したが、数人の感染者も出ている。
「自分でも常に検温し、異常があったら申し出るというのは当然のこととして、検査をしてみると、陽性反応が出たほとんどの人が無症状。お互い細心の注意を払うにしても、これではコントロールしきれない部分のほうが大きい。今の状況では、やはり誰もが不安に思ってしまうのは仕方ないですよね」。

いまだ去らない感染拡大への懸念と、試合ができないもどかしさをにじませつつ、「来週は、ようやく僕たちも、一歩でも前へという姿勢を示すチャンスをいただきました」と、感謝する。

次週、開催予定だった「ゴルフパートナーPRO-AMトーナメント」。
本来のプロアマ形式戦での実施は来年に見送られたが、主催者のご厚意で、7月9日、10日に賞金ランキングには加算されない2日間競技のエキシビション大会として、開催していただけることになった。

ツアーの再開に先駆けて、今後のトーナメント開催の指標ともなるべく、本大会では徹底した感染防止策が講じられる。

出場96選手と全関係者のPCR検査は、開幕3日前の6日月曜日に実施。
また、選手を含めた全入場者は2週間前からの検温と、渡航歴などを明記した問診表を提出するきまりだ。

スポンサーを招いてのプロアマ戦はなく、本戦も無観客で行う。
8日の練習日も含めてキャディや家族、コーチ、トレーナー、マネージャーなど、選手以外のコースの立ち入りはいっさい禁止。

選手たちは、予選落ちのない36ホールをセルフプレーで争い、大会で用意された1人1台の電動アシストカートを利用するか、自身でバッグを担いで歩くかを選択できる。

プロ入り後も河川敷コースなどで、セルフプレーを楽しんできたという石川。
「試合で帯同キャディさんが横にいないというのは寂しいですが、自分でバッグを運び、距離を測って番手を決めて、風やラインも自分で判断する。ピンも自分で抜くし、ボールも自分で拭かないと、泥がついたまま。”ミスもすべてプレーヤーの責任”が本来のゴルフの本質。僕はジュニアの頃からセルフプレーに慣れていますし、いわば原点です」。

トッププロによる新様式での熱戦は、2日間ともインターネットで生配信される。
「ファンの方には、プロの試合はキャディさん任せというイメージがあると思いますけど、プロもこうやってやるんだと。見て頂く方にも、今までとは違ったゴルフの楽しみ方を、アピールできるいい機会になるのでは」と、石川も楽しみにしている。

先月は、チャリティ活動の一環で、再渡米前の松山英樹とも、セルフバッグのラウンド風景を、ユーチューブで披露したばかりだ。

次週は茨城県の取手国際ゴルフ倶楽部を舞台に、出場96選手と”ゴルフのニューノーマル”を模索する。
「ソーシャルディスタンスは常にしっかりと保ちながら、低リスクなスポーツとしてのゴルフの楽しみ方を、僕ら選手から発信していけたらいいなと思っています。ファンの皆さんと、また心おきなくハイタッチできる日を心待ちにしながら、今は僕たちができることを、頑張っていきます」。
距離は取っても心はひとつに。男子ゴルフの新様式を、一丸で伝えていく。

※昨年の「日本プロ」の開催地となった九州地方では4日、豪雨による大きな災害が発生しました。避難されているみなさまの安全とご無事を心よりお祈りしますとともに、被害に遭われた方々に、心よりお悔みとお見舞いを申し上げます。
  • 5日放映予定のチャリティテレビマッチでは、倉本会長とのペアで、深堀さんと優作さんと対戦してきましたよ
  • 「今、僕らにできること」
  • また、こんなふうにみんなで喜び合える日ができるだけ早く戻ってきますように…©JGTOimages

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