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マイナビABCチャンピオンシップゴルフトーナメント 2019
首位タイには米ツアーを直視できない男。韓国系豪人のウォン・ジョン・リーがにらむ日本初V
「このコースはフェアウェイが狭いので、フェアウェイキープとパットが大事」と、堅く攻めて後半4番から4連続バーディ。
唯一のトラブルも、したたかにチャンスに変えた。6番のパー5は、ティショットを左に曲げた。「普通、そこは逃げ場のない場所」という窮地も木越の2打目を軽々と運び、3打で4メートルのチャンスにつけた。バーディで楽々、ピンチをしのいだ。
岩田と並んで、初日から首位で並んで13年目の日本で初Vをにらんだ。
先週の「ZOZOチャンピオンシップ」は、あえてテレビ観戦しなかった。日本初開催の米ツアー。「見ることによって、僕にはストレスになるから」。
身長190センチの恵まれた体を活かし、アマ時代から頭角を現した。米ツアー参戦も視野に入れて、06年にプロ入り。
だが途中、右腕のケガに苦しんだ時期もあり、いまだ実現していない。
「みなさんに期待していただき、勝とうと頑張ってきたけどなかなか勝てないまま、13年も経ってしまった。米ツアーに出ることが夢だったけど、家族のことを考えると、今から挑戦するのは正直、難しい…。テレビで米ツアーを見るだけで、そんな喪失感を感じてしまう」と、リーは言う。
華やかな世界からはあえて目をふさいだが、今年は7月の韓国ツアー公式戦「KPGA選手権」でようやく、待望のプロ1勝。
先週、21日月曜日には、待望の第一子も生まれた。2日後の23日には34歳の誕生日を迎えて、至福のバースデーウィークも味わった。
退院まで毎日、妻を見舞い、土曜日には初めて我が子を腕に抱いた。
「今週も毎日、妻が送ってくれる動画を見てパパを楽しんでいる。人生観もゴルフ観も変わるし、今はなによりそれが、エキサイティングな出来事」。
06年のプロ入りから13年。13年前のデビュー戦は、11月の三井住友VISA太平洋マスターズだった。
「日本でプロになったので、早く日本で勝ちたいです。ぜひ今週、勝利を目指したい」。
韓国系豪人のプロ人生が、いまようやく輝きを放ち始めた。