記事
プロたちが交代で語る「クラウンズの思い出リレー」第1話は中嶋常幸
大会が中止となってしまった今年はせめて大会の思い出を振り返り、クラウンズウィークを盛り上げよう!!
題して「プロたちの思い出リレー」。まずはツアー通算48勝のレジェンドが語るのは、奇跡の1番ホールから生まれたハートフルなお話だ。
それは98年の2日目に起きた。豪快な打ち下ろしのパー4。左ドッグレッグのスタートホールが興奮に包まれた。3位タイから出た中嶋常幸が放った1Wによる第1打はなんと、直接カップイン。
ホールインワンによるアルバトロスは、史上初の快挙であった。
「左の松林に隠れていて入ったところは僕には見えなかった。でも、異常なほどの歓声が下から聞こえてきてね。後ろの組のデービス・ラブIII(米、その年大会優勝)が『やったな』って、ハイタッチしてくれた。あの時のラブの喜びようは、今も忘れられないよ」。
その感動は、当年だけでは終わらなかった。
受け取った特別賞金を、何かに役立てたいと思案していた。そんな中嶋に、「こんなすごい記録は後世まで繋いでいかなくちゃ」と、愛知県東郷町の小規模授産施設「たんぽぽ作業所」への寄贈を勧めてくださったのが、当時、大会事務局長をつとめていたCBCアナウンサーの田口豊太郎さんだった。
これをきっかけに中嶋は、翌年から同施設への慰問を開始。クラウンズウィーク火曜日の恒例行事となった。
初年度から数年こそ、どこか他人行儀でぎこちなかった施設のみなさんとの関係も、回を重ねるごとに「”ただいま〜””おかえり〜”って。まるで毎年お正月に実家に帰るみたい」。
年々、高まる歓待ぶりが中嶋には嬉しくて、今度はみなさんを大会観戦に招待したり、若手プロを連れてゲームで盛り上がったり、大親友で、地元寿司職人の山内和義さんにも来てもらって美味しいお寿司を振る舞ったり。
ここ数年は、中嶋の足の状態が思わしくなく、出場の機会は遠のいたが交流は、20年を経た今も続いている。
青木功やジャンボ尾崎を筆頭に、錚々たる覇者を輩出してきた「中日クラウンズ」。
だが、ツアー通算48勝を誇る中嶋でさえ、ここでの優勝はない。
難攻不落と名高い和合。85年から、2年連続の2位など相性は悪くないはずだが、勝てない。1番ホールで快挙を達成した98年も、5位に終わった。惜しい試合はいくつもあったがついに落とせなかった。
「あのパー4でのアルバトロスがなかったら、僕にとってクラウンズはただただ暗い思い出だけになっていた」。
それを、当時の田口・大会事務局長が心温まる記憶にしてくださった。
「田口さんがいなければ、あの出会いもなかった。アルバトロスの喜びが、僕の中ではあの1年だけで終わらなかった。こんなに長く余韻を持たせてくれた。田口さんには改めて、感謝申し上げたいです」。
実は、施設でお寿司を握ってくれた山内さんとも80年代に、プロアマ戦で偶然一緒に回ってからの付き合いだ。
「山内さんとも今や家族も同然。クラウンズで得たものは、出会いと友情です。僕のかけがえのない宝物。(アルバトロス)ホールインワンもして、これで優勝までしていたらバチがあたるね(笑)」。
コロナ禍で、大会が中止となってしまった今年、中嶋の気がかりは、やっぱり「たんぽぽ作業所」のみなさんのこと。
「みんな、元気かな…。元気にしてくれているといいな」。
クラウンズのない今年も、けなげに花を咲かせ続けてくれているといい。
※CBCテレビ(東海地区)では、5月3日(日)午後4時から「クラウンズスペシャル〜取り戻そう!みんなの笑顔を」を放送します。放送が見られない方は、動画・情報配信サービス「Locipo(ロキポ)」で5月3日(日)午後5時から無料配信します。
昨年の第60回大会のハイライトをどうぞ!↓↓