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”Abemaの王”も「今は我慢」(4月5日掲載)
国内戦第一号の覇者誕生の一報が、本格シーズンの到来を告げるはずだったが今年の春は、歓喜の声も聞こえない。
「こんな時こそなおさら、支えてくださる方々の存在に、ありがたみが増しますね」とは、昨季の”賞金王”だ。
19年度のAbemaTVツアーで賞金1位に輝いた白佳和(はくよしかず)は、2000年にプロ転向。05年にはレギュラーに昇格して12年の「中日クラウンズ」で2位など活躍したが、14年に自身2度目のシード落ちを喫した。
以降、深刻なパットの不振に陥り、引退も覚悟したのは3年前。「年齢的にも厳しくなってきて、正直諦めかけていた。安定した職についたほうがよいのでは、とセカンドキャリアも考え始めていた」という。
そんな白(はく)を励まして、手を差し伸べてくださったのが、今の所属先「和光金属工業」のみなさんだった。
「今まで惜しい試合もあったが勝ち切れなかった。そんな自分に『悔いはないのか』と。『応援するから頑張れ』と、『君なら必ずできるから』と、声をかけてくださって…」。
資金面の援助はもちろん精神面でも支えられ、再び出直す勇気が沸いたという。
AbemaTVツアーは若手の登竜門であると同時に、ベテランが再起を図れる場所でもある。
昨年5月の「太平洋クラブチャレンジトーナメント(埼玉県太平洋C 江南C)」で初優勝を飾った白は、1年を通じて好調を続け、ついに迎えた10月のAbemaTVツアー最終戦「JGTO Novil FINAL(茨城県・取手国際GC 東C)」では”有終の美”。年間2勝を飾って、王座についた。40歳の復活劇は、願ってもないハッピーエンドで括られた。
「去年はAbemaTVツアーで活躍の場を与えていただき、良い経験もさせてもらい、僕は本当に恵まれています。この経験を、今度はレギュラーツアーで成し遂げたい。今度こそ、ツアー初優勝にこぎつけたいです」。
20年度の出場資格を取り戻し、レギュラー復活に賭ける今季はさらなる恩返しを誓い、シーズンの開幕を待ち望んでいたのだが、新型コロナウィルスの感染拡大により、4月16日に開幕するはずだった「東建ホームメイトカップ」も中止に。
その後も中止の発表が相次ぎ、白(はく)も歯がゆい思いだ。
「でも、今のこの状況を思えば当然です。仮に無観客で強行したとしても、大会はボランティアさんをはじめ本当にたくさんの方々に支えられています。その方々を命の危険にさらしてまで開催するべきではないと僕も思います。今はゴルフより、人々の安全が一番です」。
中止によって職場を失われたプロやキャディさんたちにも、生活の不安がのしかかるが「今はとにかく我慢をして、みんなで頑張って、乗り切るしかない。いつ始まってもいいように準備をして、また大会ができるようになった時こそ応援していただけるように、その時まで踏ん張って、試合が始められたときこそ、みんなで思いっきり盛り上げていきたいです」(白)。
例年、オフはほぼ毎日、調整に出かけていたが、今は週2度程度の練習にとどめて、室内に入る際には必ず手洗いや消毒。自らクラブハウスの窓を開けてこまめに換気をしたり、知人とも距離をあけて接するなど、「自分にできることは限られていて、どれも当たり前のことばかりなんですけど、当たり前のことこそ怠らず、こんな時こそプロゴルファーとして、プレーヤーのみなさんのお手本になるような行動を心掛けたいと思っています」。
日々コツコツと予防につとめながら、ひたすら忍の一字で過ごしている。