出身の福岡県那珂川市の自宅で自粛生活を送る新・選手会長が、物思いにふける異例の春。

男子ゴルフの国内初戦「東建ホームメイトカップ」は、本当なら4月16日に開幕。
前日の15日水曜日は、芸能各界著名人のみなさんも参加して、華やかに行われる恒例のプロアマ戦。
そのスタート前には、東建多度カントリークラブ・名古屋（三重県）の練習グリーンを舞台に、恒例の鏡開きが行われる。

大会主催の左右田鑑穂（そうだかんすい）・東建コーポレーション社長をはじめ、同社イメージキャラクターの中村雅俊さんやJGTO会長の青木功ら、錚々たる面々と並んで、昨年覇者とその年の選手会長も、大会が用意してくださった粋な揃いのはっぴを羽織って列席。

地元崇敬の産土（うぶすな）「多度大社」の神職による神楽が奉納されたあと、いっせいに木づちを振り上げ、地酒「上げ馬」の樽を割る。
集まってくださったファンのみなさんと一緒に、大会とシーズンを通した1年の無事と成功をお祈りする。

池田勇太（13ー15年）や宮里優作（16ー17年）、そして昨19年まで2期の石川遼ら、歴代の選手会長がつとめてきた、シーズン最初の大切な公務のひとつだ。

「鏡開きって、僕はまだやったことがありません」と、時松隆光（ときまつりゅうこう）。昨年までは、その様子もギャラリーのみなさんに紛れて遠巻きに見ていた。
「（樽を）強く叩きすぎてもダメだし、逆に弱すぎてもうまく割れないみたいで、どのくらいの力加減がいいのか…。多分、今年は事前にそのあたりもスタッフさんに質問して臨んだでしょうね」。
就任初年度の今年は達成できなかった”初ミッション”に思いを巡らせた新・選手会長は、「楽しみにしていましたので…、それはやっぱり残念」。
きっと、ちょっぴりの緊張と共に、心浮き立つはずの開幕イベントも、やむなく来年に持ち越しだ。

18歳の12年にプロ転向し、14年にこの国内開幕戦の初出場にこぎつけたがその年は、77を叩いた2日目に、痛恨の失格。
「初開幕戦に備えて相当、気合を入れていたのに、確か120位くらいまで落ちて、打ちひしがれていた。予選落ちにがっかりしすぎてスコアカードの記入欄をよく見もせずに、枠を間違えて書き込んでしまった。次からは、絶対に間違えない、と…」。
苦い記憶がその後のスコア提出時の大きな戒めにもなった。

16年のツアー初Vでシード選手の仲間入りをし、2年連続3度目の出場を果たした18年大会のプロアマ戦では、ご一緒した元プロ野球の角盈男（すみみつお）さんですら、時松の代名詞でもある”ベースボールグリップ”について、「よくその握り方で打てるもんだね！」と、大いに感心されたことを、懐かしく思い出す。

さらに本戦ではその年、米ツアーから戻って最年少での選手会長に就任したばかりの石川と、3日目まで同組対決。共にV争いで盛り上げた。
「あの時は、僕もいいゴルフができましたけど、遼さんはそれを上回るプレー。何とかへばりついていきたい一心で頑張りました」。
たくさんの方々の前でプレーし、大会自己ベストの4位につけられたことも力になった（石川は2位）。
「ほとんどの方が、遼さんの応援ではあったのですが…（笑）」。本名の「源蔵」からついた”ゲンちゃん”のあだ名がますます広く知られるきっかけにもなった。

思い入れもひとしおの大会で、「今年は優勝も視野に、相当に気合を入れて挑むつもりでした」。
いち選手としての目標と合わせて、大役の任を背負って迎えるはずの今年の開幕戦では、前職の先輩らの意思を大切に引き継ぎつつ、自身が思い描く活動指針を、ぜひ会場で示したいとも考えていた。

「僕が力を入れたいひとつがSNSの充実。男子ゴルフのアピールポイントは、圧倒的な飛距離や、100ヤードからぎゅっと戻すスピン、また奇跡みたいなリカバリーショットなどの力技（ちからわざ）。そういうシーンをまとめた動画も配信していければ、ゴルフを知らない人にもより魅力を知っていただけるのではないか…。そしてSNSをきっかけに、会場に見に来てくださった方には存分に楽しんで帰っていただくこと。そのためのファンサービスも、徹底していきたいです」。
そんな所信表明も、この脅威が去るまでは、じっと我慢で温めておく。

今はせめて、窮屈な自粛生活の一服となればとつい先日には、ちかごろ流行りの「♯リフティングポケットイン」を、自身のインスタライブで公開(↓↓）
就任からまだ3カ月あまりだが、重責を担うことになって改めて気づかされるのは、男子ゴルフを支えて応援してくださる方々のご苦労や、熱い思いだ。
「新型コロナウィルスによる開催の中止が続いていますが、それも非常に厳しい判断に迫られる中、すべての方の安全を最優先に、主催者のみなさんが考えに、考えてしてくださった決定で、本当に感謝で頭が下がります」。
動画の最後も直立不動でペコリ。
「今年の開幕戦は本当に残念ですが、来年こそぜひ見にいらしてください。よろしくお願いします！」。
就任2年目の来春こそ乞うご期待。

＜ゲンちゃんのリフティングポケットイン!!＞

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