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長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ 2021

みんなが応援している。上井邦裕がプロ17年目の初Vを狙う

上井(左)が何か言うたびに、笑いが起きる。
上井邦裕が、通算18アンダーの単独首位で3日目を終えると、その姿を見つけてどこからともなく若手選手が集まってきた。

がやがやと、リーダーを囲むと「上井さん、ナイスです!」「2イーグル、すげえです!」。

時に毒舌を交えて上井がそれらに応じると、たちまち笑いが起きる。みんなゲラゲラ腹を抱えて笑っている。

数年前なら、見られなかった光景だ。
「そりゃそうでしょう。数年前は先輩ばっかりで、後輩でもひとつかふたつ下くらいしかいなかったんだから」。

それにしても、後輩からこれだけいじられる選手もまあいない。

05年にプロ転向し、08年に初シード入りを果たしたが、15年と19年の2度、シード落ちを経験。

今シーズンはQT選手として、チャレンジトーナメントのAbemaTVツアーで10何歳も下の子たちと、わいわい揉み合いながら、2度目のシード復活を期す中で、若手選手たちとの距離を近くしていったのは大きい。

20代の頃はけっこう、とんがっていた。
「昔はけっこうすぐ、自分のミスとかにイライラしていたけど、今はそれも減って、あんまり怒らなくなりました。怒っていいことはないですからね。…歳いったからかな?」。

この日3日目も前半5アンダーと、好調で折り返した10番でボギーを叩くなど、「最初、ショットは良かったですけど、途中からしっくりいかなくなった」と、違和感を覚えながらも、同組の比嘉や西山とにこやかに喋ったり、和やかな空気は変えなかった。

「前はこういう一つのミスから崩すことも多かったけど、今は悪い時でも楽しめるようになってきたと思います」と、17番パー4ではグリーン奥から20ヤードの2打目を沈めて、3番のパー5に続いてこの日2度目のチップインイーグルを記録。

形勢を立て直すと、2位と2打差の通算18アンダーでホールアウト。
最終日は自身9度目となる最終組で、プロ17年目のツアー初優勝を狙う。

「もちろん、明日は自分の思うようなゴルフをやって、それで優勝できたら最高の1日になると思う」。

以前は、そんな思いがプレッシャーになったが、「ここ最近は、ゴルフができてありがたいな、とか。応援してくれる人たちにいいゴルフを見せられたらいいな、とか。そんなふうに思うようになりました」と、プロ17年目の優勝争いは気負わない。

2度にわたるシード復活の戦いは、怪我との戦いでもあった。
それでも、何度も這い上がり、何度目ともしれないVチャンスを迎えた。

芹澤信雄を師匠とするチーム芹澤の兄弟子にあたるベテランの藤田寛之も「新しくコーチをつけて、シード落ちからまた自分なりに取り組んで、今年になってすごい良いゴルフをしている」と、評価。

「2度のシード落ちから戻ってくるというのは生半可なエネルギーではないし、精神的にタフじゃないとできない。そこからツアー優勝というのはなかなかないと思うので、頑張って欲しい」と、エールを贈る。

先輩からも可愛がられる男は周囲の声援を一身に受けて、悲願に挑む。

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