2年ぶりに復活した部門別表彰の「20ー21年度ジャパンゴルフツアー表彰式」も、コロナ前のようにはいかなかったがその中で、これだけは前回と変わらず、どうやってホテル会場の宴会場に搬入されたのか。
ステージ横にデン、と鎮座したダイヤモンドホワイトの「メルセデス・ベンツS400d 4MATIC」がまぶしかった。
99年から年間表彰の対象に設置された「トータルポイントランキング賞」は、「平均ストローク」と「平均パット」「パーキープ率」「パーオン率」「バーディ率」「イーグル率」「平均飛距離」「フェアウィキープ率」「サンドセーブ率」の主要9部門の順位をポイント化して算出。各順位を合計し、もっとも数字が少ない選手が総合力1位として表彰される。
その冠に、19年シーズンからメルセデス・ベンツをお迎えし、「メルセデス・ベンツトータルポイントランキング賞」として同年に今平周吾を”初代”で表彰したが、昨年はコロナ禍で2021年と統合。
2年ぶりに、メルセデス・ベンツ日本株式会社の上野金太郎・代表取締役兼CEOより、ジャンボキーを受け取ったのは、大槻智春。
プロ12年目の今季は、いずれも部門別で初受賞の「イーグル率賞」と「トータルドライビング賞」のほか、バーディ率では3位と顕著に稼いでみごと、2代目のメルセデス男に。
コロナ禍で開催された2020年の6試合で早々にトップに立ち、気の早い仲間たちから祝福されたが、年をまたいで2021年がスタートした途端にスーパー新人の金谷拓実に座を奪われた。
その後、チャン・キム→大槻→大岩龍一と幾度か変遷を続けたが、ついに9月の「ANAオープン」で奪還。
その後は譲らず運転席に就いた。
「今季は長丁場でしたが、その中で良い成績を続けるのは大変。そういう意味でも今回の初受賞は本当に嬉しいです」と大喜びした一方で、ちょっぴり顔が曇るのは、2位4回(うちタイ3回)、3位タイ2回を含めてトップ10が12回と、絶好調をキープしながら今季は、19年シーズン以来となるツアー通算2勝目についに、手が届かなかったこと。
「なかなか勝てそうで勝てないのが多かったので。勝てるようにするには、何かを変えないといけないと思ってます」と、神妙に言ったが「でも…『何か』はなんなんでしょうかね…?」と、表彰前の舞台袖で首をかしげた。
「でも分かるのは、どのトーナメントも勝てるのは一人しかいない、ってこと」。
ほんの小さな命運が、明暗を分けるということ。
5月の「ゴルフパートナー PRO-AM トーナメント」は最終日を2位と3打差からスタートし、9月の「ANAオープン」は2差の単独首位で出ながらいずれも敗績。
何度も奥歯を噛みしめた。
「でも、ほとんどの選手が1勝するまでに、何回も負けるわけじゃないですか」と、顔を上げる。
「だから、諦めずに常に上位で戦うのをひたすらやり続けることが大事なんだろうと。それでようやく勝てる日がくるんだろうな、と、思っています」。
新車のメルセデスで転戦する2022年も、V争いをやり続ける。
オープニングの音楽が鳴った。
各部門別1位者の紹介が始まった。
「来年も頑張ろうと思います」と誓って、袖から壇上に滑り出た。