2位と2打差の通算11アンダーで踏みとどまり単独首位で、2018年以来となる大会2勝目をにらむ。
膠着した序盤。「ドライバーはイメージ通りだけど、アイアンがなかなかチャンスにつかない」。
距離感をつかみあぐねて、じっと我慢のパーが続いた。
やっと動いたのは9番だった。
手前カラーから8メートルの“バーディトライ”が沈むと、12番からまた左手前カラーから6メートルを沈める“ゼロパット”。
16番では、今度10メートル以上が決まるなど「ロングパットのタッチが合っている。ストレスなく回れている」と、どんな場面も33歳なりの落ち着きを見せた。
今季、5季目の米ツアーを開始する直前。
「優勝したいとか、きょうはいくつ伸ばすとか考えて、どんどん自分にプレッシャーをかけてしまってイライラしてしまう。どうやって直せばいいのか」。
答えを出しあぐねていた時に、自称「タイガーおたく」が取り入れたのがウッズの金言だった。
『1打に集中して自分の最善を尽くすだけ』
予選2日で共に回った2019年の「ZOZOチャンピオンシップ」は今も色褪せない思い出だ。
「ウッズが大好きなので。今もスイングやドキュメンタリーを頻繁に見ている」などと、YouTubeで語られた一言で一気に慧眼。
「自分の最善を尽くして負けるようなら悔いはない」と、一喜一憂がなくなった。
4打差の3位タイから国内での通算8勝目を追った先週の「カシオワールドオープン」では、チャン・キムが32の史上最多アンダーを出して優勝。
「チャンが凄かったし自分も良いゴルフをしたと割り切れるようになった」と、一点の悔いもなく、賞金28位で前回優勝から3年ぶり8度目のシーズン最終戦に飛び込むことができた。
2018年に米1勝を飾ってから毎年、ギリギリまで出場権の確保に奔走して終盤の日本ツアーに合流。
限られた試合で、シード権も確保するルーティンを継続しており「アメリカで活躍することが自分の目標。来年も同様の形でまた、日本のみなさんに成長した姿を見ていただきたい」と、頭を下げる。
とりわけ今週は「お父さんにまた優勝をみせてあげたい」と、石川とハン・ジュンゴンとのプレーオフを制して以来となる3年ぶりの大会2勝目を切望するのは、ゴルフの手ほどきを受けたレッスンコーチの父・健一さんが病床にあるから。
酸素吸入が必要で、最終日も観戦に来られるかは当日の体調次第という。
それでも、前回優勝から3年ぶりの自宅通いで「毎日一緒にごはんを食べているのでコミュニケーションは取れています」。
米滞在時はスイングチェックも味気ないリモートになってしまうが、大切な人と目と目を合わせて日々の成果を報告できることも何より嬉しい孝行だ。