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フジサンケイクラシック 2003

『今年デビュー元年。36歳の新人です』川岸良兼が復活Vにむけ、2位タイと好位置で大会を折り返す

残り2ホールを残し、暫定首位に立った前日初日の第1ラウンドホールアウト後、 「親方」といって慕 う尾崎将司に『ペシッ・・・』お尻をはたかれた。
がんばって俺についてこい、の無言のゲキ。それに応え、この日9日朝6時25分の競技 再開でも懸命に耐 えた。

第1ラウンド最終の18番ホールは、第2打をバンカーに打ち込んで、右足を淵に かけて打つ不自然な姿勢からのショット。「とうとうダボか・・・」と諦めかけた場面で、50センチにつ けてパーセーブに「俺ってやっぱ、バンカーうまい?(笑)」とおどけつつ、ジャンボと並んで首位タ イのまま続く第2ラウンドに突入だ。
その第2ラウンドでも、自ら懸念していた大崩れもなく、時折、満面の笑みも見せな がら2位タイでホー ルアアウトしてきた。 「ほんとうに記憶にないくらい久しぶりに良いゴルフ。なんだか、楽しくなってきま した」と、頬を緩 ませた。
実は、「つい最近まで、ゴルフが恐くて仕方なかった」という。
鳴り物入りでデビューして以来こだわってきた、「誰にも負けない理想のスィン グ」。追い求めるうち に、成績は徐々に下降線をたどり、自信を失い、進むべき方向性も見失った。
2001年には11年間守ってきたシード権さえ失って、さらに翌年のツアー出場権をかけ たファイナルクォ リファングトーナメント(ファイナルQT)では予選落ちを喫し「生きていても仕方な い」とつぶやき会 場を去る背中は、あまりにも苦悩に満ちていたものだ。
「悩み始めて10年以上。シード選手だったときだってね、そんな良いゴルフじゃない のに無理やりシー ド入りしていたみたいなもんで。うまく表現できないけど、考え方が間違ってた。当 時はただ、力でス ィングをどうにかしようとしていたんだね」
再起をかけた今年のオフは、形にはこだわらず、「クラブとボールの力を借りて飛ば す」シンプルなス ィング作りに取り組んできた。 同時に考え方もこだわりを捨てて、「プロはどんな手をつかっても、とにかく賞金を 稼ぐのが仕事」と 割り切って、戦うつもりだという。
それは苦しみ抜いた末に嫌というほど、思い知らされた事実。「だって稼がなくちゃ 生活できないわけ ですから・・・」。
試合にほとんど出場できなかった昨年1年間は、「自分を見つめ直すという意味で も、非常に有意義な 時間だった」と振り返った川岸。 昨年のファイナルQTランク12位で再びツアーに帰ってきた今年は、「俺のデビュー元 年。36歳の新人だ と思っています」今週も、そんな謙虚な気持ちで、難攻不落の“川奈”に挑んでいる。

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