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山田大晟「その名前に恥じないように」“ABEMA最後の賞金王”の決意

今季はABEMAツアーでも大逆転劇が生まれた。

シーズン最終戦「ディライトワークス JGTO ファイナル(茨城県・取手国際GC)」で、プロ8年目の山田大晟(やまだ・たいせい)が年末のQTも覚悟の賞金28位で大会を迎えると、最終日を2打差の単独首位から出て、4アンダーの「66」で回り、5打差をつけて圧勝。

2年ぶりの同ツアー2勝目で、賞金1位で同大会に入った内藤寛太郎(ないとう・ひろたろう)を、2万6869円差で抜き、来季1年の出場資格を勝ち取った。


    ABEMAツアーとしては“史上最後”の賞金王となった。

    2018年からJGTOチャレンジトーナメントの特別スポンサーにお迎えしたインターネットテレビ「ABEMA(旧称AbemaTV)」が今年で契約満了を迎え、ABEMAツアーの名称で行われるのは今季が最後、という話が山田ら選手たちの耳にも聞こえてきたのはシーズン序盤だった。

    「でも、はじめは誰も信じていなかった」と、山田は言う。

    「そうはいっても継続してくださるのではないか、とか。ネット中継だけでも残ってくださるのではないか、とか…」。
    ツアーへの愛着と、希望を捨てきれない選手たちの間で、けっきょく最終戦のまぎわまで情報が錯そうし続けたという。

    山田が「i Golf Shaper Challenge in 筑紫ヶ丘」でプロデビューを飾った2019年は、チャレンジトーナメントがABEMAツアーとしてスタートして2年目。

    前年の初年度から全試合が3日間競技に統一され、全試合で3日間ともネット生中継も始まった。
    「本来なら映像に映る機会のない僕らを雨の日も、風の日も追いかけてくださって」(山田)。

    中継や、インタビューに不慣れな若い選手たちには特に、プロの自覚を高める何よりの経験にもなった。

    中継を通していかに選手の個性を引き出すか。少しでも個々の人気につなげようと親身に心を砕いてくださったディレクターさんやスタッフ、カメラクルーのみなさん。

    その熱意に触れ、「僕らは“二部ツアー”ではない。“ABEMAツアー”で戦っているんだ、と。すごく張り合いを持たしてもらいました」と、山田は振り返る。

    「僕ら選手のモチベーションを高めてもらい、大成長させてもらった。ABEMAのみなさんには感謝しかありません」。

    最後の最後に自分でも思いもよらなかった大逆転の賞金王で、せめてこれまでのご恩に報いることができて本当によかったと、山田はつくづくと思っている。

      最後の日。中継ブースにスタッフさんや関係者、選手が大集結し、別れを惜しみました

        新人の21年にABEMAツアーで年間3勝を飾り、賞金王に就いた久常涼(ひさつね・りょう)は今年、PGAツアーでシード権を獲得した。
        今季は欧州・DPワールドツアーで戦う桂川有人(かつらがわ・ゆうと)も新人の21年に、1勝を飾った。
        昨季賞金王の生源寺龍憲(しょうげんじ・たつのり)も、今季から積極的に海外で戦う。

        ABEMAツアーは明日を夢見る選手たちにとって希望の光であり、世界へと通じる道しるべでもあった。

        山田が大逆転で賞金王に就いた日。
        中継ブースは感動と共に、惜別と感謝の涙で溢れた。

        ABEMA最後の生中継に、特別ゲスト解説で駆け付けた青木功が言ってくれた。
        「来年も焦らず、きょうみたいなゴルフを続けていければ大丈夫だよ」。

        はなむけの言葉を胸に、来季シード選手として立つ。

        「ABEMAツアー賞金王の名前に恥じないように。1試合1試合、1打1打を大切に、これからも頑張っていきたいと思います」と、山田。
        今月2日に行われた部門別表彰の「ジャパンゴルフツアー表彰式」でも改めて決意を述べた。

        ⛳御礼
        JGTOチャレンジトーナメントは、これからもスポンサーのみなさまに支えられ、新たな歴史が紡がれてまいりますが、まずは今季まで7年もの長きにわたり、特別スポンサーとしてご支援くださったABEMAのみなさまに、心より御礼申し上げます。
        男子ゴルフの将来を担う選手たちに惜しみない愛情を注いでくださって、本当にありがとうございました。



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