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宮瀬博文「この3年間、支えてくださった人に感謝です!」

先週の中日クラウンズ最終日。プレーオフを制したばかりの18番グリーン。放心状態で、立ちすくむ宮瀬を呼ぶ大きな声。

「ヒロ!!」。

練習仲間で兄貴分の加瀬秀樹は今週、予選落ちをして、この日最終日は別のコースで長男・哲弘君とゴルフに興じているはずだった。
「なぜここに・・・」と思う間もなく、その大きな胸に引き寄せられた。
と、同時にこみ上げてきた涙。

この日の朝スタート前に、「今日は1打1打だぞ」と電話をくれた加瀬。
にもかかわらず、宮瀬のプレーに間に合うように、ハーフでラウンドを切り上げて、わざわざ応援に駆けつけた。
16番から3ホールについて歩いてくれた、とあとから人づてに聞いて、再び胸が熱くなった。

加瀬のほか、室田淳ら仲間の手で、宙を舞った。
そのあと、差し出されたいくつもの手。
ひとつひとつ心を込めて握り返しながら、しみじみと宮瀬は思った。
「この3年間は特に、支えてくれた人たちに感謝です」。

賞金シードを失って3年。
「・・・たった3年間」と、言われればそうかもしれない。
しかし、当時史上最年少の21歳で、初シード入りを果たしたときとは、訳が違うのだ。
15年間シード選手の常連で、その間ツアー通算6勝を経験し「一度、頂点を知ってから落ちて、もう一度這い上がるには、最初のときよりもずっとパワーが必要だった」。

本当につらく「長い3年間」だった。
「俺なんかもうダメじゃん」と、何度自分を責めたことだろう。
それだけに、ドン底に落ちてなお、心から応援し、励ましてくれた人たち・・・とりわけ家族の存在がどれほど有難かったことか。

「・・・子供に気を遣わせる親じゃあ、しょうがないんですけども」と、振り返ってまたジンワリと、涙がにじむ。
手作りのお守りをくれたり、「頑張ってね」とメールを送ってくれたのは13歳の長女・愛子ちゃんと来月12歳になる次女の笑子ちゃん。

6歳になる長男・竜太郎君は、昨年からゴルフを始めた。
「明日は月例大会なんだ」などと一丁前のセリフに苦笑しつつ、日に日に成長するその姿に父として負けられない気にさせられた。

中学時代の同級生でもある妻・千恵子さんは、家ではあえてゴルフの話をしない。
いつも、楽しい話題を選んで沈んだ夫の心を引き立ててくれた。

「お父さんは、絶対に赤い服が似合うよ」と、愛子ちゃんがアドバイスしてくれたのは2位に入った先週のつるやオープン3日目。
だからこの日も、勝負服に真っ赤なポロシャツを選んだ。

スタート前のパッティンググリーンでは、専属キャディの月森洋二さんがいきなりズボンのチャックを開けて言った。
「ヒロさん、見てください!」。
引っ張り出した下着の裾は目も覚めるような赤だった、と報道陣を相手に語っていたら、かたわらにいたクラブメーカーのスタッフが「実は、今日は僕もなんです」と言って、ズボンを両手でずり下げた。
彼の下着も赤だった。
「みんな赤だね!」と、嬉しそうにつぶやく宮瀬の目もまた赤かった。
人々の温かい心に改めて触れ、涙、涙の復活優勝だった。
  • 加瀬との抱擁で感極まった

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