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日本オープンゴルフ選手権競技 2003

鬼門の10番ホールで奇跡的なバーディを入れた深堀圭一郎は、ゲームの流れが自分に 来ていることを直感していた

通算5アンダーまでスコアを伸ばしてターンした10番パー4。ティショットで歯を食いしばった深堀の口元から、小さな、しかし力のこもった声 が何度もこぼれ出ていた。

「ヨシ!!・・・ヨシ、ヨシッ!!」。

会場の日光カンツリー倶楽部は、インコースの最初の3ホールが鬼門だ。その入り 口となる10番パー4は、深堀にとってもキーホールだった。3日間、続けてティショッ トを右林の木の根元に打ち込んでいたからだ。2日目、3日目はそれでボギーを打って いた。

「ともかく、ここで打てるところにティショットすることが、大事だったんです」。
球は右ラフにあった。しかもそこから、8アイアンでピン14メートルに乗せたバー ディパットは、「ほとんど直角フック」というたいへん難しいライン。これが、ど真 ん中からカップに沈んだ。課題のホールでティショットが思い通りに打てただけでな く、奇跡的なパットを決めることができた。

大会前日の水曜日。練習のあと、コースにほど近い日光東照宮に参ったご利益が、 さっそく出たのだろうか。そういえば、あのとき引いたおみくじには、「願いごとは 必ずかなう」と記されていた。

深堀は確信した。「これは、僕の優勝パターンだ」と。スタート時、5打差あった今 野のスコアは、あえて見ないようにしていた。「この難しいコースで、相手を見なが らコントロールできるような“横綱ゴルフ”は、僕にはまだ無理と思った」からだ。 だからその時点で自分がどの位置にいるかは分からなかったが、しかしゲームの流れ が確かに自分に来ていることを直感した。

「気を抜かずに攻め続ければ、きっとまたチャンスが来る」。そう思うことで、激し いプレッシャーをおさえ込み、日光のバックナインを突き進んだのだった。

写真=表彰式のあと、仲間の胴上げで宙を舞った深堀。「今年は、あたらしくサポー トしてくださる会社も見つかって、何か良い流れが来ているな、と感じていた矢先の 優勝でした。いつまでも結果を残せない僕を、一生懸命に面倒見てくれる用具契約 先、ナイキのスタッフのみなさんにも、お礼が言いたい」

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