今週、会場入りするなりほかの選手から「東海の男」と言われた。「また希の得意な 名古屋に来たね！」。この言葉が、川原に適度なプレッシャーを与えてくれる。「緊 張感で1打1打、丁寧にプレーできるみたい。・・・僕は神奈川出身だし、特に名古屋と は縁のない人間だけど、みんながあんまり言うからなんか“その気”になっちゃうん ですよね（笑）」。

周囲からの冷やかしの要因は、2001年の今大会から2年連続でトップ5入りをしている ことにある。特に昨年の最終日は、単独首位からのスタート。途中まで、「完全に勝 てる展開」だった。

悪夢は11番パー４だった。3アイアンで打ったティショットは「力が入りすぎて」左 の木の根元へ。とりあえず出しただけの第2打は、今度は反対側のラフにもぐりこ み、「そこから、とりあえずグリーンに乗せる、というショットでいいのに、ダイレ クトにピン方向を狙ってしまって…」後悔しきりの無謀な攻めがさらにミスを呼び、 ５オン２パットのトリプルボギーで、同じ組でまわっていた谷口徹に初優勝のチャン スをさらわれたのだ。

決勝ラウンドの2日間は自身それまでのゴルフ人生にないくらい集中してプレーがで きていただけに、悔しさはしばらく消えなかったものだ。

「あのときの敗因？・・・そうですね、僕が経験不足だったってことかな。あれが谷口 さんなら、あの場面であんなとこには絶対に打たないし、もし入れても最低ボギーで は収められていたはず」。
今でもその谷口から「どうやったらあそこまで曲がるの？」などと、当時のプレーぶ りについて、からかわれることがある。そのたびに地団太を踏んできたが、いよいよ 今回、その思いを晴らすチャンス到来だ。
いま、ライバル・谷口は「ここ5年間にないくらいの絶不調」という。今週、一緒に 練習ラウンドしたがそのときも、谷口には珍しく泣き言が何度も出ていた。

対する川原は、多少パッティングに難有りというものの、「とても充実している」と 言い切れるほどショットが絶好調。「・・・間違いなく、今の谷口さんよりは良い球が 打てていると思う。残り2日も今の調子を崩さなければ」。
自信を持って、ツアー初優勝へ再挑戦だ。

• 谷口 徹