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ブリヂストンオープン 2002
「今度はあなたの番よ!」
単独首位で迎えたこの日最終日の朝。
ジャネット夫人が、こんな言葉で送り出してくれた。
「先週はスメイルが日本初優勝。今度は逆のパターンで、あなたが勝つ番よ。きっと大丈夫! 頑張って!!」
先週の日本オープン、チャンピオンのデービッド・スメイルは、レイコックの5年来の友人だ。
今週も、「テイクバックで腕がインサイドに入りすぎるから球がばらつくんじゃない? 身体と腕を一体にして振ってみなよ」とアドバイスをしてくれたことで、レイコックはショットの安定感が増すなど、公私共に家族ぐるみで付き合いを深めてきた2人。
昨年、母国の豪州ツアーでは、レイコックが先にビクトリアオープンでツアー初Vをあげたのだが、それに刺激を受けたスメイルが、すぐ翌週のニュージーランドオープンで優勝した。
そして今回は、レイコックがスメイルの日本初Vに、「お尻を叩かれるような気持ち」がしていたのは、確かだった。
「だからね、ジャネットは、今回は去年の逆になるはずだって。今日が、僕の日本ツアー初Vの日になる予感がするって、言ったんだ。でもまさか、彼女の言ったとおりになるなんてね。ゲームが終わったあと、まず考えたのはそのことさ。彼女のカンのよさにはビックリだよ」
スメイルとレイコック、不思議な縁もさることながら、そんなさりげない言い方で、夫をその気にさせたジャネットさんにも脱帽だ。
実はジャネットさんはレイコックより6つ年上の、姉さん女房。
そのせいか、「僕ら夫婦は、優勝争いだからってあまり浮かれたりするカップルではなくて、どちらかといえば、落ち着いた性格の2人といえるかも」と、レイコックは笑う。
「今日だって彼女、“上にはあんなに強い選手が一杯いるんだから、まあ、やるだけやってそれで結果が出せればいいし”なんて、落ち着いたもの。考え方が、とてもシンプルだから、助かってるよ」と、レイコックは、内助の功を強調した。
一方のジャネットさんは、勝利が決まった18番グリーンへ、歓声をあげて駆けていった長男・ジョエル君を、夫がいとおしそうに抱きかかえている姿に目を細め、
「今日の彼の戦いぶり、私も誇りに思うわ…」
そっとつぶやき、感慨深げに、胸を押さえていた。
写真上=パパとママから、最愛の息子に祝福のキス。「くすぐったいよ〜」と、照れてはしゃぐジョエル君。