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中日クラウンズ 2008

石川遼が1打足りずに予選落ち

いつもの笑顔で1番ティをスタートしていった石川だったが…。
珍しく、暗い表情でつぶやいた。「僕には、まだひとつしか引き出しがないから」。ドライバーで飛ばせるだけ飛ばして、短いクラブでピンをデッドに狙うのが遼スタイル。「それがもっとも貫けなかったコースがここ。自分のゴルフが、受け入れられなかった」と、うなだれた。

一番の敗因は14番だ。ドライバーのティショットを左にOB。ダブルボギーを打って、「気持ちが、悪いほうに吹っ切れてしまった」という。
同時に頭をよぎったのは予選カットライン。通算3オーバーまで落ちて、「気持ちの余裕が持てなくなった。耐えなければならないときに、自分を焦らせてしまったかもしれない」と振り返る。

次の15番は、もはや冷静さを欠いていたかもしれない。
フェアウェーからの第2打は、残り280ヤード。「3番ウッドを持つ勇気がなかった。届くクラブを持ちたくなってしまった」と、再び握った1番ウッドの直ドラショットはダフって左の林へ。
「まだまだ、精神的に弱いと感じた」と、痛感させられたこの1打が致命傷となった。
第3打は7アイアンで、フェアウェーに出すしかなかった。
残り150ヤードの第4打は奥のカラーへ。
パターで打った5打目を外してボギーを打った。

和合に跳ね返された。
この日、7位タイに浮上した藤田寛之が、その難しさをこんなふうに表現していた。
「フェアウェーの芝は薄く、グリーンは小さくて速い。シビアな状況が重なって、パワーだけでも無理。かといって、繊細だけでもダメ。ポイントが狭く、わずか1、2ヤードの計算ミスが、大きなトラブルになる」。
16歳はこの日、体中でそれを感じていた。

「グリーンの攻め方、ピンを攻めるショット、広いほうを狙っていかなければいけないところ…。今までの僕には経験のないコースマネジメントが必要だった。普通のコースとは違う。和合は、僕のゴルフではまだ通用しない。壁があったと思う」。

この日3オーバーの73に唇を噛んだ。
「今日は、ほとんどがもったいないボギー。僕の技術でもパーに出来るところがいくつもあったのに」。
この日の会見は、最後まであの笑顔が出なかった。

しかも、その途中にショックな知らせが追い打ちをかけた。スタッフに呼ばれていったん、中座して同組のジャンボ尾崎が過少申告で失格となったことを聞かされた。
この日、マーカーをつとめた石川が、18番で「5」と書くべきところを「4」と記入。
ジャンボも、このミスに気づかないままサインをして足早にアテストルームを出てしまった。
「僕が悪いんです」と石川。
「バンカーから1打で乗ったと思ってしまって…」と、自分を責めた。
デビュー後、初めての予選落ちだけでもショックが大きかったはずだが、さらに重い現実がその肩にのしかかった。

再び会見場に戻ってきたが、相変わらず悲観的な言葉が続く。
「器の大きさというか、引き出しというか…。そういうものを僕は1つしか持っていないことを改めて感じました。今は1つしかないもので毎週、戦っています。コースやコンディションは毎週違うので、いろんなものを引き出しから出して、コースに合わせてプレーすることが必要なんですけれど…。悔しい思いで一杯です」。

その中でもせめて希望は、「去年よりティショットを考えて打つようになったこと。それが今回、コースが教えてくれたことかな。良いものを学べた気がします」。
2日間、同組でまわったジャンボはこう言い残した。
「コースを勉強して経験して感じ取っていくもの。そういうのは、教えてもらうものではい」。
これを次にどう生かすか。先は、まだまだ長い。


  • 初の同組で回ったジャンボ(左)には学ぶところも多かったが、最後は後味の悪い結果に。

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