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“永遠の王子”登場

晴れやかな笑顔で登壇して開口一番。「わたくしが永遠の王子。中嶋常幸です!!」。言ったそばから、たちまち笑み崩れた。照れくさそうに言い訳だ。「なんて、王子じゃなくて、オヤジですね。ハニカミオヤジ、みたいな感じでね(苦笑)」。

22日(金)から、東京有明の東京ビッグサイトでスタートした「ジャパンゴルフフェア2008」。その2日目の23日(土)に、契約メーカー「SRIスポーツ」のブースで繰り広げられた中嶋のトークショー。
若さではもちろん、16歳の最年少プロには勝てないが、話術では負けない。
プロ32年の経験と実績に裏打ちされた技術論は、しょっぱなから聴衆をひきつける。

床にコインを置いて、短いクラブでバックスイングだけを繰り返す、自宅でも気軽に実践できる練習法の数々を、分かりやすい言葉で次々と披露していく。
ラウンド前と後は必ずストレッチを欠かさないこと。また、背筋を伸ばして正しい姿勢で歩くと飛距離の維持につながると説いた。
「そして、最後はなんといってもクラブ選び」。
53歳を迎えてなお、若手に引けを取らない飛距離をキープしているのは、昨シーズンから投入したゼクシオのニュードライバーとの相性の良さという。

オフのトレーニングは、自宅近くの山登りと青森県鯵ヶ沢でのスキー合宿がメインと明かした。
5年来続けているスキーは、インストラクターに「3級」の腕前と太鼓判を押された。
2人の孫と、長男でツアーメンバーの雅生らも加わって一家団欒を楽しみながら、無理なく体調維持につとめている。

昨シーズンはゴルフ中継以外でテレビ番組の露出が増えたり、「自分としては充実した1年間だった」というが、やはりひとつも勝ち星がないままだったのは物足りなかった。
中でも「一番の誤算だった」と打ち明けたのは、3連覇を狙った日本シニアオープンだ。
最終日にエージシュートの65をマークした青木功に「あ然としている間に優勝をさらわれた」。
6打差5位からの大逆転優勝を許した悔しさの一方で、「65歳になったって優勝できるんだな」。
ひと回りも上の大先輩に大いに勇気付けられたという。

「あの日、帰りの空港で会って青木さんにお礼を言ったら、青木さんのほうもかなり感極まっていてね。登場口まで、ずっと俺の肩を抱いたまま“トミー、お前も頑張るんだぞ”って励ましてくれて・・・。いくつになってもチャンスはあるんだって、教えられましたね」。

優勝争いの最中ほど、プロゴルファーになってよかったと思う瞬間はない、と中嶋はいう。
「喉が渇いて心臓ドキドキ、ヒザはガクガク・・・。あれえ、これはいつもの自分じゃないぞ、なんて。そう思う瞬間がまた楽しくて。あれほど、幸せを感じる時はほかにない」。
今年も、またあの至福のときを味わうために・・・。
昨年、取りこぼした優勝を目標に、今年は4月のつるやオープンから始動。レギュラーを10、シニアは6試合前後でスケジュールを組む予定という。

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