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サントリーオープンゴルフトーナメント 2007
加瀬哲弘くん「この大会が、大好きだったんだ」
思い出が一杯詰まったあの場所も来年は、もう来られない。
「寂しい」とは言わなかった。
加瀬哲弘くん(小6)は、そのかわりにこう言った。
「僕、この大会が大好きだったんだ」。
開催コースの総武カントリークラブは、地元・千葉県習志野の自宅から車で30分もかからない。半ドンの土曜日なら学校がひけてからでも十分間に合う。
「飛行機も電車にも乗らなくていい。家からすぐに遊びに来られる、たったひとつのトーナメントだった」。
今年も、大会3日目の土曜日に会場にやってきた哲弘くんは、残念そうにつぶやいた。
今年最後の開催となるサントリーオープン。
特に哲弘くんの心に深く刻まれたのが、2004年大会だった。
父親の8年ぶりの復活劇。
谷原秀人と韓国のYEヤンと並んで首位に並んだ3日目に、哲弘くんを伴って会見場に現れた加瀬秀樹は、長男の前で「明日は絶対に勝つと思ってやります」と、堂々と宣言。
そして迎えた最終日。子供広場でスナッグゴルフを楽しんだあと、9番ホールから父親の応援に加わった哲弘くんは12番で、それまで3ホールで立て続けにバーディチャンスを外していた父親のもとに駆け寄った。
「お守りあげる」と言って手渡したメモ用紙に書かれていたのは「優勝まちがいなし」とのメッセージ。
その言葉に奮い立ち、父は2打差で逃げ切ったのだ。
「あのときのメモ用紙は、あそこにあったのを使わせてもらったんだよ」と、ふいに思い出したように哲弘くんが駆け寄ったのはクラブハウスの片隅にある電話室。
なつかしそうに覗き込み、哲弘くんは「あれっ」と声をあげた。
「なんだ、切れちゃってるよ・・・」。
確かにあると思った場所にメモ用紙が見つからず、残念そうに電話室から出てきた哲弘くんを、母の文子(あやこ)さんがねぎらった。
「てっちゃん、来年からもうこの大会はないんだよ、寂しいね」。
哲弘くんは遠くを見詰めたまま、黙って母親の言葉を聞いていた。
12歳の沈黙が、何よりその思いを物語っているようだった。