記事
久光製薬KBCオーガスタ 2001
「今は涙ばかりで、何も考えられない…」(チャンピオン・平石武則)
帽子を取って大観衆に深々と頭を下げてから、再びかぶり直した帽子を、今度は目深にずらして隠した頬には、大粒の涙が伝っていた。
41歳が、泣いていた。
カメラマンたちが、その表情を収めようと、駆け寄って来た。
泣き顔を隠そうと、タオルで懸命に押さえるが、溢れる涙は止まらない。
インタビュアーにコメントを求められ、長い沈黙が続いた。
「涙ばっかりで、何も考えられません…」
ツアー19年目。
「いつかはシード入り、そしてツアー1勝を」と頑張ってきたが、遠い道のりに、くじけそうになったことが何度もあった。
「それでも、日々の練習、トレーニングだけは、欠かしたことがなかったんです」と訴えた。
現在のファイナルQTに変わる前の月例大会、予選会…。ツアーの出場権を求め、奔走した苦しい日々が、激戦を戦い終えた平石の脳裏に駆け巡っていた。
「再来週のサントリーオープンも出場権がなく、マンデートーナメントから挑戦するはずだったんです…そんな自分がまさか…」最後のほうは声にならない平石に、満員のギャラリースタンドから「感動を、ありがとう!!」との声援がとんでいた。