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三菱ダイヤモンドカップゴルフ 2008

甲斐慎太郎「勝ちたかった」

決まった、と一度は確信して拳を突き上げた。本当に、あともうひと転がりだった。最終18番パー5。スプーンで打った、残り263ヤードの第2打は、ピンまで20ヤードのグリーンカラー。
これを沈めれば、ひとまずひとつ後ろの最終組で回るマークセンを抜ける。最低でも、プレーオフに進むチャンスが出てくる。

「10(アンダー)にしたい。でも、人前でチャックリしたらかっこ悪い」。そんなことを思いながら、サンドウェッジで打ったアプローチは、はかったようにカップの寸前で止まってしまった。
その瞬間に膝が砕けた。呆然と、その場に崩れ落ちた。

ボールはそれ以上、もうピクリとも動かないことを見届けてから、やっとの思いで立ち上がり、「あと1打、どうにかならなかったのか…」と、天を仰いだのも無理はない。

少しの風が吹けば、あっけなくカップに転がり落ちそうに思えたその距離が、余計に悔しい。

「あそこまで行くんだったら、入って欲しかったのに。あれだけ思わせぶりにされちゃあ…(苦笑)。入らないんだったら、もうちょっと遠くで良かった」と、地団駄を踏んだ。

9番でOBを打ったがボギーでしのぎ、12番のパー5で6メートルのイーグルを決めて、息を吹き返した。
「正直、プレッシャーがないといったらウソになる。でも、みんなかかっているんだ、と自分に言い聞かせた」。この日は、ツアー初優勝だけを狙っていたのだ。

先のパインバレー北京オープンで単独2位。
鳴り物入りのデビューから5年。一度はゴルフを諦める覚悟をした男がシーズン早々に初シードをほぼ手中に収めたことで一気に自信を取り戻して、今季2度目の単独2位。
「でも、2位がどうこういうより勝ちたかった」と、吐き出した。

昨年3月に結婚した妻・智香さんが9月に出産を控え、一家の長としての自覚も深まって、次に狙うは初のメジャー舞台だ。
この2位で、全英オープン日本予選ランキングは有資格者を省いた実質2位に浮上した。
「自分がゴルフでご飯を食べていること自体が信じられないのに、メジャーなんて全然、現実味が沸かない」としながらも、「全英、というよりはこれからもいろんな国でいろんな人とゴルフが出来たらいい。このまま、ずっと夢を見られればいい」と、はるかかの地に思いを馳せる。

2週後の同・日本予選最終戦「ミズノオープンよみうりクラシック」の前に、海外で腕試しだ。
「今は、試合があればどこでも行きたい」とどん欲に、次週のオープンウィークは悔しがっている間もなくアジアンツアーの「バンコック・エアウェイ・オープン」に挑戦だ。

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