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甲斐慎太郎がゴルフ伝道師に
プロの入場を合図にブラスバンドの演奏が、きびきびと鳴り響く。
続いて子供たちの大合唱が、この日の特別講師を包み込む。
曲目は「世界がひとつになるまで」。子供たちの心のこもった歌声と、メッセージ性の強い歌詞に、グっと来た。
今年1月からスタートしたジャパンゴルフツアー選手会メンバーたちのゴルフ伝道の旅も、これで5校目。
今回の小学校訪問は、当初スナッグゴルフの贈呈式が先だった。
しかしかねてより、このプロの訪問を心待ちにしていた学校では「まずは歓迎の気持ちを示したい」と、スケジュールを急遽変更。
子供たちの熱烈歓迎ムードに「本当にびっくりして…。どきどきしました」とは、プロ6年目の甲斐慎太郎だ。
そのあと3年生を対象に行った、スナッグゴルフ講習会では自然と力がこもる。
最初はローラー(パター的役割を果たすスナッグ用クラブ)で転がすショットから、ランチャー(パター以外の全ショットに対応する同クラブ)でふわりと上げるアプローチ。
スナッグゴルフは皆この日が初めてという子供たちも、プロの丁寧な指導を受けながら、次第に熱を帯びていき、レッスン最後のフルショットでテンションは最高潮に…!!
いよいよプロと対戦することになり、希望者が殺到した。
中から選ばれた幸運な子は、松岡友樹くんと門井佑紀さんだ。
ハンディを2つずつもらい、みごとプロから優勝をもぎとった門井さんは、「チャンピオンになれて、最高に嬉しいですっ!」。
子供たちにはまさに、待ちに待ったこの日だった。
数日前まで風邪気味だった子も、担任の三好初代先生にこう宣言していた。
「私、熱があってもその日は絶対に学校に行くからね!」。
この日のために、どこかから枯れ枝を拾ってきて数日前から校庭で模擬練習をする子も。
「今回プロが来てくださったことは、子供たちには本当に良い刺激になりました」と、三好先生もえびす顔だ。
福本常雄校長先生によると「学校で一番元気がある」という三好学級。
最後に三好先生が「講習会の感想を発表したい人!」と挙手を求めると、出てくる出てくる。
「初めてゴルフをして嬉しかったです!」。
「初めてのゴルフにドキドキしました!」。
「いろんな経験が出来て、良かったです!」。
「フルショット、チップショット…いろんなショットが出来るようになりました!」。
「甲斐慎太郎プロとゴルフが出来て、本当に嬉しかったです!」。
時間が過ぎても「僕も」「私も聞いてください」と、子供たちの発表は止まらない。
レッスン終了後も目をキラキラさせながら、次々と質問を浴びせてくる生徒たちに、甲斐は我知らず自分の子供時代を重ねていた。
「昔のことを、思い出した」。
記憶をたどり「でも自分には、こうしてプロに直接教えてもらう機会はなかった」。
その言葉に、瀬川博臣教頭先生も深く頷く。
「“本物”を体験することは、子供たちにとっては何よりの宝物なんです。だから、こうしてプロに来ていただくことは、本当にありがたいことなんです」。
「確かに僕も、子供のときにこんな体験が出来ていれば、今頃はタイガー・ウッズを超えていたかもしれない。…なぁ〜んてね」と、ぺろりと舌を出した甲斐は、「僕のほうこそ、子供たちにパワーをもらった。今年も頑張らなければという気持ちになった。お礼を言うのは、僕のほうです……!!」。