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ジーブ・ミルカ・シンは惜しくも・・・バランタイン選手権最終日

一時は3打差つけて首位を独走したシンだったが・・・
欧州ツアーが韓国で行われるのは、このバランタイン選手権が初だった。それだけに、共催のアジアンツアーとともに運営に加わった韓国PGA(KPGA)の力の入れようは、相当なものだった。

特に、いまや世界ランク5位につける英雄KJチョイに対するケアは厚く、初日に彼の組についた警備員は、もしかしたらその日のギャラリーよりも多いのではないかと疑われるほどで、英語と韓国語で記された「お静かにボード」の数も半端ではなく、グリーン回りにほぼ1メートル間隔に取り囲んで立つギャラリー整理のスタッフが、選手が打つ気構えを見せるたびにそれをいっせいに掲げる光景は、そっくりそのまま、KPGAの意気込みを象徴するかのようだった。

最終日の主役は残念ながら、そのKJでも、また米ツアー2年目の新鋭、韓国系アメリカ人のアンソニー・キムら韓国勢、とはいかなかったが、それでもゲームは最高潮に盛り上がり、地元ファンを喜ばせた。

優勝争いは、インドのジーブ・ミルカ・シンと北アイルランドのグレイム・マクドゥエルの一騎打ちとなった。
序盤は前日3日目の第3ラウンドで、64のコース新をマークしたシンが一時3打差とリードしたが、マクドゥエルがしぶとく食い下がり、後半から白熱のバーディ合戦を展開。

17番パー3で、グリーンを外してボギーを打ったシンの隙を突いて、プレーオフに持ち込んだ。
18番ホールの繰り返しで行われたマッチプレーは、マクドゥエルの鮮やかな一撃で、終止符を打った。
3ホール目の第2打を、ピンの根元につけるスーパーショットでライバルを仕留め、シャンペンシャワーならぬ高級スコッチウィスキーの“バランタイン”を全身に浴びた上に、世界に8本しかないという40年物の「バランタイン」を副賞に受け取って、まさに美酒に酔いしれた。

敗れはしたものの、シンの戦いぶりも見事だった。
5年前、日本ツアーでシード落ちを喫し、ロッカーの片隅で泣き崩れた面影は今や微塵もない。
欧州ツアーの一角を担う選手として、世界の強豪と堂々と渡り合うまでに成長した。

「確かに、自分としては期待外れの終わり方だったけれども、誰もが勝つためにプレーをし、さらにその中でもっとも良いプレーをした人間が勝つ・・・。今回は、グレイムが素晴らしいプレーをした。ただそれだけのこと。私は、勝つべき男が勝ったのだと思っています」。
そう言って、静かに勝者をたたえたシンだったが今回の優勝争いが、またひとつ大きな自信となったようだ。

「今週、非常に良いゴルフができたから、ドラルではもっと良いことが私を待っている気がするんです」と、シンは言った。
“ドラル”とは、次週の世界ゴルフ選手権CAチャンピオンシップの会場のドラルゴルフリゾートのことだ。
「来週が、とても楽しみ。ドラルでも、ベストを尽くします」。
韓国済州島で味わった悔しさをバネに、世界舞台での健闘を誓った。

  • バランタインの高級シャワーを浴びて美酒に酔うマクドゥエル
  • チャンピオンとともに、コースレコードと2位の受賞で表彰式に出席したシン(右)は「ドラルでも全力を尽くします!」

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