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三菱自動車トーナメント 1999
初日の17位から9位に浮上した桧垣繁正の弟・豪
5番、517ヤードのロングホールで、グリーンそばまで運んだ第3打。
2メートルのバーディチャンス。わずかにショートしたときもこのクセが出た。 「昔は、クラブ投げたリとか、芝とか叩いてた。でも、いつのまにかやめましたね。
我慢の気持ちが出てきたのかな。そのかわり、いまは、“自分”を痛めつけるようになったみたい(笑)。
前なんか、パターでふくらはぎを思いきり叩いちゃって、しばらく腫れちゃった」
この日は、ショットが冴え渡った。ティショットは、びしびしフェアウェーを捕らえる。
多少のブレは、正確なセカンドショットで、軌道修正していく。
第1打を、右に押し出してしまった2番ロング。
球はカート道横のラフに入り、スタンスすると、足がカート道にかかってしまう。
だが、「ドロップすると、よけい狙えなくなる」と、不安定な足場のままプレー。
きれいにフェアウェーを捕らえ、ピンまで1メートルに3オン。バーディだ。
いま、そこにある1打に、思いきり、集中できる。
いわゆる、“ゾーン”に入ってしまうこともしばしばだ。
「そうなんです。気が入りすぎて、だめなのかもしれない」
残り約160ヤード、フェアウェーど真ん中からの第2打がふけ気味のミスショット。
右グリーン横からピン上1メートル。なんとしても決めたいパーパットに集中して、無意識に、キャディさんに球をもらおうと手を差し出した。キャディさんはつい、こうツッコんだ。「プロ、球はプロのポケットの中です」。
最終18番。顔に人知れず、笑みが浮かんだ。
スコア速報の電磁ボード。『ヒガキゴウ』の名前が、首位と1打差の6アンダーグループに乗っていた。
第2打は、ピン手前約4メートルのバーディチャンスだ。
強気で打ったパットは、カップのほんのわずか手前で、止まった。
「これを入れたら、首位に立てる、そう思ったら、またまた気合が入りすぎてしまいました」
兄の繁正は、通算イーブン、53位で予選通過。
「アニキは、仲良しの兄弟であり、ライバルでもある。アニキと、優勝争いがしてみたい」。
午前スタート組だった豪は、正午すぎにホールアウト。午後スタートの繁正とは宿舎が一緒。その後の約5時間は会場内で練習したり、読書をしたりして過ごしながら兄を待つつもりという。
いま愛読しているのは、阪神タイガース・野村克也監督の本。
「昨年まで最下位だったチームをあそこまで引っ張っていけるのは、やはりスゴイと思う。ゴルフに通じるものが何かある、と思って」。決勝2日。タイガースのように、進撃できるだろうか。
★兄の繁正のはなし
「今週は弟に任せますよ。僕も7つ8つ行きたかったけど、頭とプレーと違ってましたね」