記事
日本オープンゴルフ選手権 2009
石川遼が猛チャージ
しかも、相変わらずカップの位置はシビアで、ここで縮めるのは容易ではない。
しかし、もはや今季4勝の18歳は、はしゃぐでもなく、笑うでもなく、残り170ヤードか
ら7番アイアンで、右横8メートルに乗せたバーディパットを淡々と沈め、ギャラリーを熱狂させてみせるのだ。
首位と5打差の38位タイからスタートしたこの日3日目は、スタートから気合いが入っていた。
1番は、1日を占うのに大切なホール。「ここで今日の流れが分かるのでは、と思い、バーディパットは集中して打ちました」。
60ヤードのバンカーから2.5メートルに寄せた最初のチャンスをねじ込んだとき、猛チャージは約束された。
6番パー5では右の池に入れながら、この日3つめのバーディを奪うしたたかさだ。ドロップした第3打は残り258ヤードから右手前の木越えを余儀なくされたが5番ウッドで軽々と、3メートルにつけてこれを決めたとき、池に入れたことを知らないギャラリーの「ナイスイーグル!」との掛け声も混じって、どっと沸いた。
しかし本人は相変わらず淡々とバーディを積み重ねた。
8番で、バンカーあごの3打目を、不安定な姿勢から打つピンチも1メートルに寄せてしのぎ、自身5度目のボギーなしの65は3つ前の星野英正が樹立したばかりのコースレコードをさっそくと、塗り替えてしまった。
前日2日目はショットが乱れ、スコアメイクに苦しんだ。すぐあとの練習で思い浮かべたのは、先週のプレジデンツカップで目に焼き付けたスターたちの姿だった。
「一流の選手は、アイアンでもドライバーでも体が回転し終わってから、ボールが飛び出していく。ヘッドが遅れて出て行くんです」。
2月のアクセンチュアマッチプレーでも、フィル・ミケルソンを子細に観察したときに「クラブが体から離れない」と、自分との違いを実感して帰ってきた。
そして今回は、特に背後からタイガー・ウッズの練習を食い入るように見つめ、またひとつ、違いを見いだして帰国した。
「かなり頭の中に、映像として残っていましたから」。
まさにウッズのイメージで、ショットを面白いようにピンに絡め、まだ半数以上の選手がコースにいるうちに、あっという間にリーダーボードを駆け上がり、そのまま頂点に居座った。
ほかにこの日66を出した星野が一時は8アンダーの大量スコアを記録したが、平均ストロークはこの日も74.492と、難しさは相変わらずだ。
そうそうスコアが出るコースではない。
「予想外のスコアですけど、今日は、かなり高い確率でフェアウェーをキープして、当たり前のようにグリーンに乗せることが出来ていた。大満足ですね」と、はにかんだ。
だが、すぐに笑みは消えた。
「今日は今日で、終わりです。明日は、また厳しい1日が待っている」。
ゴルファー日本一決定戦の大舞台は1歩1歩、踏みしめるごとに「国内メジャーの重さを感じる」。まして、賞金ランク1位で迎えた今年は、なおさらだ。
「スコアはこれ以上は望めない。明日は、こんなに上手くはいかないと自信を持って言える。もういちど、気を引き締めていきます」。
大会史上最年少Vは、ほかのどの日本タイトルと比べてももっとも若い勝利だ。優勝賞金4000万円のビッグマネーで今季5勝目を飾れば、史上最年少の賞金王にもまた大きく一歩、近づける。