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日本ゴルフツアー選手権 Citibank Cup Shishido Hills 2010
石川遼が2位タイに
史上最年少のツアー優勝を飾った2007年。今大会開催の1週間前に、高校のチームメイトとラウンドしたことがある。
あまりの難しさに「普段は80でまわる子が、90を打ったり」。
その中で、「そのとき絶好調だった」という石川はただひとりパープレーで回って「支配人にも凄いといって褒められた」。
友人からも、羨望のまなざしを浴びたものだが「今日のコンディションは、あのときよりもはるかに難しかった」。
そればかりか、「僕には、今シーズンで一番の難しさ」。
硬く、スピードのあるグリーンに加え、この日初日はうっそうとした森の上空を、強い風が吹き荒れて、「頭も心もフル回転」。
しかしそんな状況を、18歳は心から、楽しんだ。
「僕は調子が良いときは、風が気にならないから」と、難条件にも躊躇や迷いはほとんどなく、スタートの連続バーディを弾みにして、宍戸で初のアンダーパーには、ツアー通算7勝目をあげた今年の中日クラウンズを引き合いに「和合の58よりも、今日の70のほうが手応えあります」。
ギネス記録よりも濃かったと、本人も言ってはばからないその内容は、まず6番だ。
588ヤードのパー5は、第2打が木の根元。
枝が横に張りだした松の木は、クラブを短く持って、枝の下に潜り込み、「ボールと顔の位置が近くて怖かった」と振り返ったほど、ほとんど正座の姿勢ですぐ目の前のラフにちょこんと出すしかなく、「どうしてこんなところに来てしまったのか」。
自問自答も、あとから周囲に状況を聞いて、むしろラッキーだったことを知る。
一度はほとんどOBゾーンに消えたボールは岩や木に跳ねて、そこまで戻ってきたのだそうだ。幸運を生かし、アプローチで1メートルは見事なパーセーブで切り抜けた。
本人自ら、大きなトラブルがないように、祈りながら進むという意味で、「宍戸のアーメンコーナー」と銘打った7番から10番を怪我なく乗り切ったばかりか、距離が伸び、難易度が増した508ヤードの9番パー4で、残り170ヤードの第2打を奧3メートルにつけて、スコアを縮めた。
そして602ヤードの15番パー5だ。
前の14番で連続ボギーを打って、なんとしても嫌な流れを断ち切りたい場面。
ティショットでフェアウェーを捉えると、石川は躊躇なく、第2打でドライバーを握っていた。
フェアウェーからといえど、芝は短く刈り込まれ、しかも左足下がりのライは、けっして易しい状況ではない。
「成功というハンコが押せる確率は50%にも満たなかった」と本人もリスクを重々承知の上で、しかし「出来るだけ、グリーンに近づけたかったから」。
それこそ“遠回り”が大嫌いな、18歳の最短ルートだった。
みごと手前の花道を捉えた瞬間に、「これまでやった直ドラでは一番。会心の当たりでしたね」と近ごろでは珍しく、フェアウェーを歩きながら満面の笑みもこぼれ、残り30ヤードのアプローチをサンドウェッジで1メートルにつけて、バーディを奪った。
1アンダー2位タイの出だしは、今季出遅れがちだった初日としては、初めてのトップ10発進だ。「このコースで、しかもこのコンディションで、初めてアンダーパーで回れて、清々しい気持ちで一杯です。今日は今年、一番ゴルフを楽しめたラウンドでした」。
しかし、すぐに笑顔の頬を引き締めて、「これから3日間も、ゴルフの難しさというものを、噛みしめながら回りたい」。
今季のツアープレーヤーNO.1決定戦。5年シードのメジャー戦で、この先まだ長い道のりは覚悟している。