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サン・クロレラ クラシック 2010
石川遼が小樽のコースレコードを更新
しかし、辛くも60位タイのカットラインに滑り込んだと知るや、ディフェンディングチャンピオンが燃えた。
「このまま帰りたくはない」。
最初の第2ラウンドは、早朝6時22分からのスタートに、「体力と精神力との勝負」と強い気持ちで臨んだものの、「疲れは否めなかったと思う」。
初日から連日の夜中2時半起きに、「ショットも乱れて、パットも崩れかけてしまって」。
不甲斐ない18ホール。ホールアウト後は休憩もそこそこに、練習場に向かった。
約1時間のインターバルはほとんど居座って球を打って「ラッキーなことに、開眼した」。
全英オープン前週のスコティッシュオープンあたりから、ときどき試していた課題。
「勇気を出して、フラットに振ってみよう」と決めた。
本人の意識では、「ほんの5ミリほどの違い」だそうだが、効果は絶大だった。
「バックスイングでフェースを開いて上げれば、その反動で閉じて下りてくる。ボールが捕まる」。
今まではその逆で、結果的に出ていたスライス球が防げる。
「思い切ってやってみたから、今日のこのスコアがある」。
そして、それ以上に支えになったのが大ギャラリーの声援だ。
この日は、ほとんど半日をコースで過ごしたが、朝からその数は減るどころか増えるばかりだ。
第3ラウンドの後半は、もうすぐそこに夕暮れ空が迫っていたが温かい拍手は消えることがなかった。
「こんなに長い時間、僕のプレーを見てくださっているわけですから。外も暗くなって、プレーも暗かったら申し訳ない。せめて今日は最後まで見て良かったと、思ってもらえるプレーがしたい」。
弱音を吐かない選手が「人生で一番きつかった。もう、6時20分にはスタートしたくない」と苦笑したほど。この日の1日36ホールは18歳にとっても、「心も体も限界まで来てましたけど、疲れたプレーは見せたくなかった」。
ずっしり重たくなった足を、無理に蹴り上げた。
「歩幅を10センチ、広くするつもりで元気に歩いて行こうと思った」という。
1日のうちに、60位から一気に8位タイ浮上。感謝の気持ちがいっぱい詰まったコース新の63。まして、屈指の名門・小樽での記録更新に「ある意味、奇跡。たくさんの人をいい意味で裏切った。幸せです。誇りです」と、頬を染めた。