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〜全英への道〜 ミズノオープンよみうりクラシック 2010
連覇を狙う、石川遼
「ああ、遼くんはここから入れたんですね」。
関係者からそんな話を伝え聞くと、もう1年も前のことなのに、感激はいっそう深くなる。同時にあの1打の持つ意味を、考えてしまう。
「一期一会を感じる。ひとつの運が、このホールを大好きにさせてくれたんだな、と」。
ティグラウンドからグリーンまで、高低差40メートルの打ち下ろしの16番は、もともと「大好きなホール」だった。「セカンドからグリーンを見下ろしたとき、また、グリーンからセカンド地点を見上げたときの景色が、本当に美しいんです」と、この日の会見でも夢見るように、うっとりと語った。
それほど思い出深いこのホールで奇跡を起こしたのは、昨年の今大会。前半大量リードの最終日も12番で2発のOBを打って、自ら混戦に身を埋めた。しかし苦しい展開も、自らきっぱり断ち切った。
16番のチップインイーグルで、年間4勝の最初の勝利をたぐり寄せた。史上最年少の賞金王への道筋を作った。
「あのときは、ドライバーにもアイアンにもキレがあり、昨年優勝した4試合の中でも、一番良いプレーが出来た大会だったと思う」と、いま振り返ってみても、良い記憶しか見あたらない。コースへの、またゴルフへの愛もいっそう増した瞬間だった。
今年4度のチャンスがある中で、最初の連覇を狙う直前に吉兆だ。
この日水曜日のプロアマ戦。奇跡の16番で、本番前にまたしてもイーグルを奪った。残り300ヤードの第2打をスプーンでピンそば1メートルにピタリとつけた。
1年前は、どのホールでも両サイドに無数に潜むOB杭が怖かった。
「コースが狭く感じた」ものだが「今日まわったら、そこまで狭くは感じなかった」。
先週は初出場の全米オープンで4日間をプレーして、粘っこく密度の濃い芝を経験してきたおかげで梅雨時で茂った日本の高麗芝も、難なく対応出来る。
サッカーはブラジルのアレシャンドレ・パト選手を真似たという、大きめのウェーブをかけたヘアスタイルも、やる気に満ちた精悍な顔つきも、どれも1年前よりもうんと大人っぽくなった。連覇達成は、この1年間の成長を示すのに、何よりの機会だ。
今週のコース攻略は、あの世界新の58をマークした和合と似通っている。
「ドライバーで打って、グリーン近くからピンをデッドに狙っていく。バーディチャンスの近道です。僕の好きな攻め方です。精神状態さえ安定していたら、いい戦いが出来る自信はある」。“急がば回るな”が座右の銘の早熟な18歳が、今週はここよみうりで、またどんな伝説を作るのか。