地元・静岡で行われた先週のとおとうみ浜松オープンは、初日に首位。一転、今週は１オーバーの59位タイと出遅れたが、河瀬に「焦りはなかった」。

ＯＢ杭のプレッシャーがなかった先週のコースよりも、ラフが深く、フェアウェイが狭い千葉カントリークラブ梅郷コースのほうが、「むしろ僕向き。飛距離が出るわけでなく、ポイント、ポイントで攻めてスコアを作るのが、僕の持ち味」。

日に日に順位を下げた先週とは逆に、今週はジワジワと順位を上げてきた。「もっと気持ちに余裕を持ってやったほうが良い」との先週の反省を生かした。

あがり４ホールのバーディラッシュで、通算９アンダーは４位タイ。
最終18番もピンそばのバーディで締めて、今度こそあの人への尊敬の念を打ち明けることが出来た。

“チーム芹澤”の一員。だが正確に言うと、師匠は藤田寛之だ。芹澤信雄は「さらに上の大師匠という感じで。喋るのも緊張する」。その点、藤田は掛川市のご近所さんで、互いの家までわずか10分。

２年前からオフのトレーニングも練習も一緒。直接、指導を受けるのも藤田だ。身長167センチ、体重も70キロ前後と、体形も似通っており「サイズがまったく一緒で。ウェアは全部、藤田さんからもらってます」。

そのせいもあって、近ごろは後ろ姿に「藤田さんかと思った」と、間違われることも多くなった。これにはさすがに“仏の藤田”も「イヤなんですけど」と、抗議の声を上げるがもちろん河瀬は、「パターも似てきたみたいで」と、嬉しくて仕方ない。

「藤田さんは尊敬するプロゴルファーで、見ていて自然とそういう形になっちゃいました」と言うがむしろ見習いたいのは、スイングや外見というよりも人間性。「ひとつのことに、ひたむきに取り組むところ。努力を怠らないところです」。

自身初の首位につけた先週初日は「てんぱっちゃって。芹澤さんのことばかり言っちゃって」。うっかりして、肝心の藤田のことを言いそびれた。
週を改めて、ようやく言えた。尽きることのない藤田への憧憬の念。
「ぜひもう１回、喋りたいと思っていた」。その点でもこの日の上位進出には大きな意味があった。

今年は師匠が、初のマスターズに挑戦。「いつも目の前にいる人が、オーガスタでプレーしている。ファンの方から見れば夢のような状況も、僕には変な感じで」。その贅沢な環境に、時々陶然とすることがあるという。
「すごいとしか言いようがない」。
「お前とは年季が違うんだよ」と、師匠に軽くあしらわれることも、ひとつの励みだ。
「スイング時にあおるクセを直せ」と藤田から徹底的に指導され、改善につとめてきた。
２週連続の活躍に「やってきたことは間違いじゃなかった」と、ますます自信を深めて最終日に挑む。
かねてより熱望してきた師匠との最終組。残念ながら、河瀬はそのひとつ前で回ることになったが「追いつきたい」。実力も、その生き様も、丸ごとその背中を追いかけていく。

• 河瀬 賢史
• 藤田 寛之