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ANAオープンゴルフトーナメント 2011

伊藤誠道くんが単独首位に!!

「キャディさんの言うとおりに打ったらそのとおりに転がってくれた」とアマチュアの首位奪取に輪厚のハウスキャディさんにも感謝
最終9番パー5も、刻んできっちり1.5メートルのバーディ締めに、フェアウェイ方向に向き直ってコースに一礼。輪厚に向かって深々と腰を折った。16歳の謙虚な気持ちが詰まったこの日の18ホールだった。

今大会は2度目の出場。また今年のツアー参戦はこれが3試合目。しかし、予選落ちが続いた。そればかりか他のジュニアやアマチュア大会でも思うような成績が残せなかった。

2009年の「VanaH杯KBCオーガスタ」で14歳と21日は史上最年少予選通過。
昨年の「三井住友VISA太平洋マスターズ」で10位タイ。「俺は行けるんだ、と勘違いをした。それ以上を求めて躓いた」。どこからでもピンを狙おうと躍起になった。「でもことごとく、打ちのめされた」。

いつも頭にあるのは「先輩方に追いつきたい」。この春から通う杉並学院高校は、OBに薗田峻輔や石川遼。「でも僕は先輩たちのように、豪快なゴルフではない。飛ぶほうでもない。背伸びをせず、無理して2オンを狙わず、身の丈にあったゴルフをしよう」と、考え直した。「気負わずにいったのも良かった」と等身大のプレーで、強風が舞う難条件を克服した。

インスタートのこの日は12番で、8メートルがカップに沈んで、「今日もなんか良い始まりだ」と、さっそく確かな手応えだ。次の13番では「完璧なセカンドショット」。残り166ヤードは「朝露で、きっと飛ばない。打つ直前にピカっと判断した」と、7から6アイアンに持ち替えてピンそば1メートルだ。

3アンダーで折り返すと2番では、ピン横10メートルが決まって「後半も流れある」。最後まで揺るぎのないマネジメントは9番でも「3打目狙い」と残り113ヤードに刻んで、そこで初めて気がついた。

「今日もノーボギーだ」と嬉しくなった。「2日続けてなんて初めてだから。びっくりしたのと、満足したのと」。99年の日本ゴルフツアー機構発足以降、アマチュアが36ホールをボギーなしで回ったのは、2000年の「住友VISA太平洋マスターズ」で、宮里優作が第2、3ラウンドで記録して以来。 そればかりかアマチュアが首位で決勝ラウンドを迎えるのは、これが初。

難解なグリーンも、ハウスキャディさんのアドバイスに素直に耳を傾け「本当に、言われたとおりに転がった」と、感謝する。66はアマチュアとしてのコースレコードタイ記録に「ショートゲームで取るのが僕のゴルフ」と、改めて確信した1日だった。

並みいるプロを率いて堂々首位も、普段は無邪気な1年生。目下の悩みは、「制服のズボンがぶかぶかで、ボンタンみたいになっている」こと。「真面目な生徒なのに」と、おどける。「新しく買わないと」と、笑う。
入学前の採寸では、腰回りが90センチもあった。中学生最後の正月三が日に、羽目を外して「美味しいものを食べ過ぎた」。身長166センチに対して体重は75キロ超。「たった3日で4㌔増えた。そして3月にはぶくぶく。ほんとにおデブになっちゃって」。膝にも支障を来して坂道を上がるのも辛い。メタボのおじさんみたいになっちゃった」。

反省からランニングを始めた。家の居間で積極的に体を動かした。体調管理につとめて「お腹のお肉も落ちました」。8㌔減に成功して、内藤雄士コーチとスイング改造にも着手した。お手本にしたのはベン・ホーガンの名著「モダンゴルフ」だ。ドライバーは365CCと小ぶりのヘッドで操作性と安定性を磨いて、飛距離アップにも成功した。

プロのツアーは「僕にとっては月、火、水が大事」と、練習日を何より重視している。今回の練習ラウンドでも前半のハーフで米ツアー経験のある貞方章男と回って洋芝のアプローチを習得し、後半は優勝経験のある矢野東とのラウンドで、輪厚攻略のコツを盗んだ。

「練習で得たものを試合でやる。ツアーは僕にとって勉強の場」と、ただいま成長まっさかり。これで週末の文化祭も、欠席が決まった。オバケ屋敷の出し物ではオバケになり損ねたが、「これでみんなに良い報告が出来る」。

楽々の予選突破どころか、15歳でツアーを制した石川に続く2日目に高校生Vの可能性も出てきた。「優勝・・・ッスか。全然実感がないですが、明日も伊藤誠道らしいゴルフで頑張ります」。

予選落ちした石川も、後輩にエールを残した。「誠道は普段は可愛い後輩だけど、ひとたびコースに立つと、彼自身が主役になれる。そういう強い気持ちを持つ選手。オープンゴルフは年齢とか、プロもアマも関係なく一番を決める大会。遠慮をせず、ぜひ主役になって」。
バトンは託した。

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